香港政府のトップ、李家超(John Lee)行政長官は9月23日、3日間の政府指定ホテル隔離を廃止すると発表した。9月26日から適用する。入境後は3日間の「医学的健康管理期間」が適用され、その後は自由となる。香港から日本に渡航する場合ワクチンを完了していれば隔離なしで入国できることから、既に香港人は日本行きのチケットを含め海外旅行の航空券も買い始めており、キャセイパシフィック航空と香港エクスプレスのウェブサイトは、サーバーダウンを防ぐためアクセスコントロールをしている。
航空会社のウェブサイトはサーバーダウンを防ぐためにコントロールも
香港は24日現在、検査による陽性反応を示した人は1,741,603人、最終確定した累計感染者は411,620人、死亡者は10,106人となっている。新規感染者は5190人、うち143人は海外からの輸入症例だ。一方、ワクチン接種者については、1回目が686万1716人(94%)、2回目を終えた人は668万3654人(91.7%)、3回目も終えた人は535万1219人(77.4%)、4回目が43万3429人となっている。
香港政府は8月12日より政府指定ホテルでの隔離を1週間から3日に短縮し、4日間を4日間の「医学的健康管理期間」、3日間は「自主健康観察期間」とする防疫対策を実施してきた。
一方、欧米各国はワクチンを一定回数接種していれば、PCR検査と隔離なしの入国を始めていた。日本政府も段階的に入国条件の緩和を進めてきたが、10月11日より入国者の上限撤廃と個人旅行を解禁することを表明。欧米並みの政策を採用することになった。
香港政府は中国との関係と重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験から厳しい防疫対策を行ってきたが、中国が当面の間ゼロコロナ政策をやめる気配がないうえに、現状の入境政策を続けると「香港の国際的な経済都市としての地位を失いかねない」と経済界を中心に政府にボーダーの開放を求めるコメントが続出しており、政府はその声に押された格好だ。
入境の条件は、ワクチン接種が完了していて、24時間以内の抗原検査で陰性であることだ。また、入境に必要な電子手続きである電子健康申報を登録しQRコードを取得しなければならない。実名制に移行したアプリの「安心出行(LeaveHomeSafe)」のインストールも求められる予定だ。
これまでは、厳密に言えば3日間のホテル隔離、4日間の「医学的健康管理期間」、3日間は「自主健康観察期間」の「3+4+3」の合計10日間を1クールとしていたが、今後は「0+3+4」の1週間を1クールと捉える。
香港国際空港到着を0日とし、到着後は空港でPCR検査を受け、陰性であれば、公共交通機関などを使って自宅や観光客であればホテルに向かうことができる。
その後、3日目の午前までは「医学的健康管理期間」となり、「安心出行」は黄色表示となる。黄色の間は、レストラン、バー、ホテル、ゲームセンター、サウナ、フィットネスクラブ、カラオケ、美容室、パーティールーム、老人ホーム、指定病院などに入ることはできない。ただし、ショッピングモール、デパートには入ることが可能だ。2日目に香港各地にある社區檢測中心(Community Testing Centre)に赴いてPCR検査を受け、その結果が陰性であれば、3日目の午後から安心出行の表示が青に代わり、香港の各施設に入ることが可能となる。
3日目の午後からは4日間の「自主健康観察期間」に移行し、4日目と6日目にもPCR検査を受けなければならない。6日目のPCR検査が陰性であれば7日目の午前で正式な防疫措置が終了となる。
この措置の発表を受け、キャセイパシフィック航空や香港エクスプレスのウェブサイトにアクセスが殺到。サーバーダウンを防ぐためにサイトのアクセスコントロールが行われた。日本人は海外旅行ができなくても国内旅行という代替手段があるが、香港市民は中国本土であってもパスポートが必要なことが多いため「国内旅行」は実質存在しない。新型コロナ期間中はまさに香港内に缶詰状態だった。その反動が一気に表面化した形だ。
新型コロナ前は年間で香港の全人口の3分の1近い200万人以上が日本を訪れるなど、日本は人気トップクラスの渡航先。2022年1月~8月に日本を訪れた香港人は累計で5900人だが、そのうち1300人は入国制限期間中の8月だけでたたき出した数字だ。日本から香港の渡航も容易になるが、日本と香港の渡航制限の緩和により航空券の高騰は避けられないほか、香港人との飛行機の座席の取り合いになるため、状況が落ち着くには一定の期間が必要になりそうだ。