食物環境衞生署(FEHD)は3月1日、「小食食肆(Light Refreshment Restaurants)」と呼ばれる軽食店が客に提供できるメニューを緩和する措置を始めた。これにより、約4300店が恩恵を受ける。
香港におけるレストランのライセンスは、一般的なレストラン業務を行う「普通食肆牌照(General Restaurant Licence)」、サンドイッチやおかゆなどの軽食やドリンクなどを提供する「小食食肆」の2種類がある。すしや刺し身を提供する場合は「綜合食物店牌照(Composite Food Shop Licence)」という別のライセンスが必要であるほか、店内でアルコールを提供する場合は「酒牌(Liquor Licence)」を取得することが義務付けられている。
その中で、小食のライセンスは、軽食を提供するレストランは「冰室」と呼ばれる店が代表的だが、サンドイッチやホットドックを提供できる店、豆腐花が扱える店など、グループAからグループFまで細かく規定されている。
今回の政策は、2022年10月に李家超(John Lee)行政長官の施政方針演説に盛り込まれた内容を実行するもの。具体的には、3月1日より「簡単に調理ができ、たくさん油を使わないもの」であれば、「蒸す」「煮込む」「いる」メニューであれば基本的に提供して構わないことになった。
緩和により、提供できる料理はかなり自由となったものの、依然としていくつかの制限が課されている。前述の刺し身やアルコールについてのライセンスは別途取得しなければならないほか、火鍋など油を使わないがテーブルに座って調理するような料理、鉄板焼き、焼き肉などをメニューとして出すことは不可。店のレイアウト、ガスコンロのような台所の調理設備などを変更する場合はFEHDに申請し、認可を受ける必要がある。ただFEHDは、ライセンスを発行する際、手続きを簡素化と時間を短縮するため、先にライセンスの発行を行い、その後、審査を実施する方針を固めた。
FEHDによると、香港内にある約4300店が恩恵を受けると試算している。香港は新型コロナウイルスに関する厳しい防疫対策で飲食業への経済的ダメージが非常に大きかったことから、この緩和により収益拡大が期待されている。一方、これまでグループAからFまで6種類の軽食店があったが、その垣根が事実上なくなることになり、店の特徴や個性がなくなるという可能性もある。そうした条件下でどのように他店との差別化を図り、競争の激しい香港の飲食業界で生き抜くかが鍵になると見られる。