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香港への日本産鶏卵輸出、過去最高を記録 人気ベーカリーで総菜パンにも

香港のローカルベーカリーでも日本産鶏卵を使った総菜パンが登場

香港のローカルベーカリーでも日本産鶏卵を使った総菜パンが登場

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 香港で人気のローカルベーカリー「嘉多娜餅屋(Kadorar Bakery)」(G/F, 54 Pitt Street, Yau Ma Tei)」が12月7日、日本産の卵を使った総菜パン「午餐玉子堡」の販売を始めた。これは日本産鶏卵の販売促進を進める日本養鶏協会のプロジェクトの取り組み。

イベントも開催し、目の前で実際にパンを作る様子をデモンストレーション

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 現在、日本産鶏卵の輸出は全体の約93%を香港市場向けが占め、10月単月でも3865トンが香港に輸出されている。昨年同月比が約2143トン、9月が約3007トンだったことから見ても、毎月着実に輸出が増えている成長市場となっている。この背景には、今回の香港現地のローカルベーカリーでの採用を含め、日本人や日本食レストランだけでなく、ローカルの世界にも裾野が広がっていることも挙げられる。

 日本産鶏卵と外国産の一番の違いは流通体制。つまり、生産から消費者の手に渡るまで、消費者の安全と健康を確保するために厳しく監視・管理されていることが大きい。この処理を行う場所を、農場で鶏から産まれた卵がパック詰めされるまでを、Grading(選別)とPacking(パック詰め)の頭文字を取った略称で「GPセンター」と呼ぶ。このGPセンターでは、日々卵をを洗浄、乾燥、検査、計量してパック詰めを国内流通と同じように一貫して行い、香港の消費者の手元にまで届く体制を敷く。

 輸出量が着実に増える香港市場に課題がない訳ではない。家畜にとってストレスや苦痛が少ない飼育環境を目指す「アニマルウェルフェア」が拡大し、「香港」という世界とつながりがある地域であるからこそ、欧米の考え方の浸透度も早く、ケージフリー(放し飼い)の鶏卵を扱うホテルなども多い。

 日本産鶏卵の普及により、「日本の卵は全て生食で食べられる」という認知が広がっている現状にも注意喚起を促す。日本国内での卵の賞味期限は、25度で保管された場合に生で食べられる「2週間」に設定されており、 10度以下で保管した場合、理論的には産卵から約60日間、生で食べられるとされているが、このような厳密な温度管理が前提となっている。海外へ輸出される鶏卵は冷蔵コンテナの低温管理で輸送されており、「基本的には問題ない」が、小売りから食卓に上るまでの流通を考慮して香港で手に入る卵は「加熱用」という表示で60日の賞味期限のものが一般的。「日本=生食でいけるというイメージ先行には消費者も注意しほしい」という声もあり、最近では、価格はさらに高騰するものの、空輸での「生食用」の卵を流通させることで啓発していくことに挑戦する企業も出てきている。

 同ベーカリーは、日本産卵をいくつか比較検討した後、黄身の濃さなどで今回は、人気の大分県産「蘭王」を使って新商品を開発。通常「餐蛋包」と呼ぶスパムとスクランブルエッグのパンを、日本産卵を使っている意味が香港人に分かるよう、「午餐玉子堡」と新しい名前を付けた。

 「蘭王」を採用した理由について、オーナーでパン職人の陳浩然さんは「黄身の色が全然違うこと。またみずみずしさも出せるし、光が当たったときにきれい」と話す。「この商品はこれまでも販売しているものだが、日本の卵を使うことで通常だとほぼ完全に焼き切る必要がなく、少しとろみも出せて見た目もよくなる。日本産の卵を使えば時間は半分くらいになり、味わいは倍以上になる」と利点を挙げる。

 「スクランブルエッグの香り・風味・輝きを新次元に進化させた商品」として、1個16香港ドルで「香港市民の手に届きやすい価格帯」を維持して販売する。陳さんは日本でもパン作りを学んだ経験がある。アイデアを凝らしたパンを開発し、価格も消費者の手が届きやすい金額を設定することで、「大手ベーカリーチェーンに負けないよう、日本のベーカリーを肩を並べられるように発展していきたい」と話す。とにかく「うちのパンを購入してくれる近くの住民の方を大事にしたい」という思いが強い。同商品は、油麻地の店で販売をスタートし、売れ行きを見ながら他の店も検討する予定。「蘭王」を使った同商品の販売は12月31日まで。

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