香港のMTR●湾西ショッピングモール内にある「Don Don Donki海之恋本店(OP Mall Store)」で5月10日、日本酒の缶商品「Canpai(カンパイ)」の販売が始まった。
同商品を販売するAgnavi社(神奈川県茅ケ崎市)は、1合(180ミリリットル)サイズで「日本酒を飲みやすく身近に楽しんでほしい」と、昨年11月に初めて香港に展開し、「ICHI-GO-CAN(1合缶)」シリーズとして、銘柄ごとに異なるパッケージで日本酒缶を販売した。当時は香港内の高級スーパー「Citysuper」で販売したが、今回はサイズは同じながらも価格帯をより手頃に、ブランド名を「Canpai(カンパイ)」に統一した商品で、改めて香港市場で勝負する。
今回香港で販売する商品は埼玉の酒造メーカーが製造した日本酒で、白地に銀の文字で「Canpai」と入れたロゴのラベルが特徴。「純米吟醸」はしっかりと明示し、「香港は暑い地域でもあるので、フルーティーで華やかながらもきっかりとキレがある日本酒を用意した」とAgnavi社の玄成秀社長は話す。価格はCitysuperと比較して3割程度安い45.9香港ドルに設定。初日の10日は16本が売れた。
玄社長は「日本酒業界のゲームチェンジャーとなり、日本酒を通じて日本の文化を世界に広めたい」との思いで、東京農大在学中に起業し、2021年2月から日本酒1合缶を販売している。
日本酒は、日本市場における消費量減少という課題があるものの、輸出については、日本食ブーム等を背景に近年増加傾向で推移してきたため、「日本酒を缶にして発売する」という事業を生み出した。日本酒は国内出荷量がピーク時(1973年)には170万キロリットルを超えていたが、近年は40万キロリットル程度の水準まで減少。ピーク時から77%減少していることになる。
同社は、日本酒の蔵元からまとまった量の日本酒を購入し、自社の充填(じゅうてん)設備を通じて180ミリリットルの缶に日本酒を詰めて販売する。香港を最初の輸出先とし、実績を積んできた。
玄社長が香港を狙う理由の一つとして、「香港はもともと土地も狭く、売り場面積も限られている。陳列を考えても、積載効率が良くなり、欧米よりもメリットを感じてくれるのでは」と期待を込める。缶にすることのメリットは、同じ1合を瓶とした場合、缶は約半分の重さであることに加え、リサイクル率も高い。ほかにも、最近では香港でも「かん酒」の文化が少しずつ紹介されているが、缶のまま温めやすいという点も挙げられる。玄社長は現在もまた、東京農業大学の醸造科学科と共同研究を続け、日本酒に関してさらに異なる包装容器の可能性についても検討しているという。
初回の出荷は300本。香港内では今後他店舗への拡大を狙い、日本国内でも充填拠点を増やすなどして、世界に向けて2023年度中に100万本の出荷を目指す。
●=草かんむりに全。