映画製作会社「銀都機構(Sil-Metropole Organization)」が運営するシネコン「影藝戲院(Cine-Art House)が6月7日、銅鑼湾(Causeway Bay)にある翡翠明珠廣場(Jade & Pearl Plaza)に映画館「影藝戲院(Cineart JP)」(23-36 Paterson Street, Jade & Pearl Plaza, Causeway Bay, Hong Kong)を開館した。コロナ禍で苦しみ抜いた香港映画界にとって復活ののろしを上げたともいえる出来事に注目が集まっている。
香港にとって映画産業は世界に通用する数少ない産業だが、コロナ禍による外出自粛などの負の影響は大きく、映画館運営最大手の一つだった「UA戲院(UA Cinemas)」が2021年3月8日に突如、閉鎖するなど厳しい経営環境に追い込まれていた。
Cineart JPの場所には、もともと最初に「邵氏兄弟(Shaw Brothers)」傘下の「翡翠明珠戲院(Jade Pearl Cinema)」がオープンし、その次は、香港の大手シネコンの一つである「MCL Cinema」が「MCL銅鑼灣JP」として映画館を運営していた。2017年になると新興シネコン「Cinema City」が引き継いだ。ところがCinema Cityは、満期が近づいた賃貸契約を再更新せず、4月30日で銅鑼湾から撤退することを表明していた。超一等地にある同館の行方が注目されていた。
ここに「影藝戲院」が同映画館運営に名乗りを上げた。影藝戲院は1988年に湾仔(Wan Chai)で創立され、メジャーな映画よりはコアな映画ファン向けのインディーズ映画を上映してきた歴史を持つ。現在はメジャーな映画も上映しており、九龍湾(Kowloon Bay)と青衣(Tsing Yi)に映画館を構え、銅鑼湾は3カ所目の映画館となる。湾仔にあった最初の映画館は2006年に閉鎖しており、約17年ぶりに香港島への復活を遂げた。
館内は全体を薄めの青緑色で統一することで落ち着いた雰囲気を醸し出す。一方、各劇場内は茶褐色のシートを並べる。スクリーンの数は全3幕で、そのうちの一つは380席と香港島で最も座席数が多い。それに合わせスクリーンの大きさも15.5 メートル×6.8メートルと巨大スクリーンを設置した。残る2つは合計278席で、スクリーンは14.5 メートル×6.6メートル。全てに4Kの投影機を使うことでより鮮明な映像をスクリーンに映すことができるほか、Dolby Atmosの音響設備を使い、臨場感のある音を流す。
会員になれば、映画鑑賞券とスナック類が2割引となるほか、誕生日にはクーポンを配布。ポイントがたまれば映画チケットやギフトなどの購入も可能となるなどの優遇策を用意した。
Cineart JPのオープンを機に、6月12日から同社が運営する3つの映画館全てで毎週月曜は映画チケットを一律40香港ドルで販売する。