海外輸出向けの日本産鶏卵のうち93%のシェアを誇る香港市場で、油麻地・廣東道にあるレトロ喫茶「大安茶冰廳」(G/F, 830 Canton Road Yau Ma Tei.)が11月7日、日本産卵を使った期間限定メニューの提供を始めた。
イベントでは日本のGPセンターの過程、衛生管理などについても説明
香港の大衆食堂の中でも、冰室の「冰」と茶餐廳の「廳」が組み合わさる「冰廳」。もともと「冰室」は冷たいものを提供する店、「茶餐廳」はよりレストラン色が強くなるもので、この2つの要素をかけ合わせた同店は54年の歴史を持つ。2022年、初代オーナーの移住に伴い、伝統的な喫茶店から、さまざまなレトロ要素を残しながらも現代的カフェへと生まれ変わった。メニューはコーヒー、軽食、デザートのほか、カフェの要素を取り入れた中華と西洋料理を融合させたメニューなど、再オープン以来、新メニューに挑戦してきた。
この「挑戦」の様子に日本養鶏協会は「日本産鶏卵が入り込める隙がある」と狙いを定め、今後のより一層のローカル店での日本産鶏卵の使用拡大を目指し、タイアップ店のひとつとして同店とタッグを組んだという。
香港では現在、スーパーや小売店などで数ブランドの日本産卵が並ぶなど、卵コーナーでは日本産が特別なものではなくなってきている。もともと大多数を占める中国本土産だけでなく、タイ産、アメリカ産、シンガポール産など選択肢が多い中、日本の卵はこの3年間、輸出が3倍以上に右肩上がりで増えている。
提供開始の7日、日本養鶏協会が香港のメディアやインフルエンサーに向けて日本産鶏卵の良さをアピールし、新メニューを試食してもらうイベントを開いた。併せて、木製の「日本産鶏卵使用」の看板をオーナーの楊翠兒さんに手渡し、楊さんは早速、正面入り口のショーケースの横に飾った。
香港で販売される日本産鶏卵は一般的に「加熱用」の表示がある。香港の一般消費者の間でも迷いがある。協会では「消費期限は各国により基準が異なる。日本では生食用を前提としているので2週間の設定。香港に向けては船便で来ることを想定して『加熱用』としての設定になっている」と説明。参加者からは「日本産の卵は他の国のものとくらべてパッケージが異なり、割れる確率が低い」というコメントも寄せられた。同協会は、「日本産鶏卵は衛生管理、小さなひび割れまでもを検査する過程があり、日本国内の流通と同様に香港まで届けられるか」を説明し、質問してもらう機会となった。
今回提供する新メニューは、エッグタルト「紫薯蘭王蛋撻」(32香港ドル)、スコッチエッグ「梅菜肉餅蘇格蘭蛋」(62香港ドル)、卵ドリンク「●。滾蛋」(45香港ドル)の3種類。
香港では昔からメニューにあるのに注文する客が少ないドリンク「滾水蛋」がある。お湯にローカルの生卵を入れ、少し砂糖を加えたただけのドリンクで、古くは栄養を取るために飲料として労働者や妊婦などが飲んだともいわれるが、現代ではサルモネラ菌の繁殖を恐れ、味の問題からも実際に飲んだことがある香港人は少ない。同店では日本産卵を使うことで、この「安全性」の問題は解決できるとし、それにエスプレッソを加えて「卵」の香りがするミルクコーヒーに仕上げた。
エッグタルトも紫芋の甘みと卵が引き立て合い、2層のフィリングで、下の層には濃厚な紫芋ペーストを入れた。スコッチエッグも黄身の色味を強調するメニューで、今回の商品には香港でも人気のブランド「蘭王」を使ったという。
同店では現時点ではエッグタルトには期間終了後も継続して提供を検討しているが、「それ以外のメニューも客の反応を見て決めていきたい」という。
営業時間は9時~19時。今月30日まで。
●=口へんに非。