香港・中環の士丹利街にある、人気の天ぷら専門店「天ぷら次郎」(ShopE G/F World Trust Tower,No50 Stanley Street, Central TEL 2780 8666)が3月1日、3周年を迎え、春の山菜をメインに使った天ぷらコース「3周年記念 春の山菜天ぷらコース」の提供を始めた。
同メニューは前菜1品、天ぷら8種で最後に天丼か天茶を選べるようになっており、価格は680香港ドル。180ドル追加で春菜の天ぷらによく合う栃木県産の純米吟醸「大那(だいな)」をカラフで提供する。同店では通常のコースメニューにも季節の野菜として春先にはコゴミやタラの芽などを組み合わせることもあるが、春野菜をメインにしたメニューは今回が初めて。
コースは前菜、車エビの天ぷらでスタートする。この時期の産地は有明海、筑前海からの福岡産の「容姿、色つや、甘みがそろったもの」を使い、カウンター奥に水槽を設け新鮮さにもこだわる。続いて、タラの芽、フキノトウ、白木の芽(コシアブラ)の春野菜3種を1品ずつ提供する。
タラの芽とフキノトウは日本通の香港人の間では春野菜として知られているが、海外ではほとんど食べる習慣がなく、独特の風味や苦味、食感に戸惑う人も多い。そこで調理場を仕切る福田次郎さんは、タラの芽は抹茶塩でほろ苦さを緩和し、ふきのとうには田楽みそで食べることで苦味を感じづらくさせるなど、初めて食べる人には一品ずつ食材の特徴と食べ方を説明する。
その後、島根県の宍道湖で春を告げる魚として珍重されているうまみの強い白魚の桜葉巻き(白魚の入荷がない場合はメゴチを使用)、ハマグリのわんに続き、稚鮎、ヨモギ(ヨモギの入荷がない場合はコゴミを提供)、行者ニンニクと春の食材が続く。
栃木県出身の店主・福田さんは「幼少の頃、自宅近くの山に入り、日頃から山菜採りをした。ヨモギは母親に天ぷらにしてよく食べた山菜で、ヨモギの天ぷらを提供する店は日本でも珍しく、香港で挑戦したい山菜の一つ」と話す。
北海道産の行者ニンニクは、ニンニクに似た強烈な匂いのあるネギ科の多年草だが、ニンニクと間違える人も多いという。最後にはセリと小エビのかき揚げの天丼または天茶を選ぶ内容でまとめた。
味付けには塩とつゆを両方を提供するが、塩は全部で4種類。藻塩、梅を使った塩や抹茶を使った塩、香港人に人気のトリュフ塩も用意した。大根おろしもたっぷりと使えるように用意し、好みで調節しながら食べることができるようにする。使う油は、ごま油と米ぬかから作った米油を混ぜて使っている。素材によって衣の量も揚げる時間も変え、170度と200度に達する温度の違う鍋を2つ並べ、それぞれの素材を「一番良い状態で」揚げるという。
カウンターは「パフォーマンスを行う舞台」と言い、背の高さを生かして、揚げた天ぷらを斜めに風を切るように大きく腕を振って余分な油を落とす動作が特徴の福田さん。「山菜の天ぷらは衣をつけて揚げることで素材が持つ水分をどれだけ抜いて味を凝縮させるか勝負。春野菜の独特の香りと一緒に、揚げたてならではの食感も楽しんでほしい」と話す。
営業時間は、ランチ=12~15時、ディナー=18~22時。