香港競馬の2024-25年のシーズンが9月8日、沙田競馬場(Sha Tin Racecourse)で開幕した。
2024-25年のシーズンが開幕した、香港競馬のレースの様子
オープニングセレモニーでは獅子舞が披露され、香港のアイドルグループ「MIRROR」の呂爵安(Edan Lui)さんがパドックリングでミニコンサートを開いたほか、観客のエリアには中国文化らしく銅鑼(どら)が設置されるなど、競馬場内は祝賀ムードがあふれた。当日は4万2556人の観衆でにぎわった。
今季の注目は、香港ジョッキークラブ(HKJC)としては同クラブ6人目となる女性ジョッキーの黄寶●(Britney Wong)さんが見習騎手として同日の第4レースでデビューしたこと。初レースでは3着に入った。
初レースとなった第4レース「鳳凰山讓賽(LANTAU PEAK HANDICAP)」は、1000メートルの直線コースで行われた。黄騎手が騎乗した「專家(Glorious Expert)」は好スタートを切り、道中は中団より少し後方、外目の位置から競馬を進める。最後の400メートルで一気に順位を上げ、最後は2着馬との争いとなったが、半馬身弱及ばず3着となった。HKJCでの初めてのレースを、そつなく騎乗した。
競馬は、男性と女性が同じフィールドで対等に戦う数少ないスポーツの一つ。HKJCはこれまで5人の女性ジョッキーを輩出してきたが、蒋嘉琦(Kei Chiong)騎手が2018年1月8日にけがによる引退を最後に途絶えていた。黄騎手で香港競馬史上6人目の女性騎手となる。
黄騎手は元々、水泳と射撃の経験があるアスリート。特に水泳では優秀な成績を収めていたが、身長が伸びないなど体格的な面で不利だった。そうした中、HKJCの騎手訓練課程についての話題をラジオで聴いた母親の勧めで競馬の世界に飛び込んだという。
2016年にHKJCの訓練学校に入学するが、それまでは遊びとしての乗馬経験どころか馬に触ったことすらなった。黄騎手は2022年、南オーストラリアのトレーナーの元に所属するチャンスを得て、602レースに騎乗し50勝を挙げた。
香港に戻り、2024年6月に見習騎手のライセンスを取得。今後はDavid Hall厩舎(きゅうしゃ)に所属して騎手活動を行っていく。ナイトレースが開催される●馬地馬場((Happy Valley Racecourse))を騎乗するにはHKJCの許可がいることから、最初は沙田馬場(Shatin Racecourse)限定の騎乗となる。
HKJCの規定により20勝を挙げるまでは10ポンド(約4.5キロ)の減量の特典が与えられる。競馬の世界では1キロの違いが1馬身に匹敵するともいわれている。
黄騎手のメンターは、名馬「サイレントウィットネス」に騎乗するなど通算652勝を挙げた香港競馬の名騎手で、現在はHKJCの訓練学校で指導教官をしている高雅志(Felix Coetzee)さん。「黄選手は質問があると、いつでも電話やメッセージで聞いてくる」と話し、高さんもしっかりと黄選手をサポートしているという。
●=女へんに尼。●=足へんに包。