香港の出入境者を管理する入境事務処(Immigration Department)は10月16日、突如、「観光客やビジネスマンが香港の入境する際に税関窓口に提出する「旅客抵港申請表(Arrival Card)」の提出する必要はない」と発表した。同日から施行されている。いわゆる事務手続きを簡素化することで、カウンターで入境事務処理をする職員の負担軽減と手続きを待つ間の行列対策を講じ、時間短縮効果につなげることで、より気軽に香港に来てもらおうというのが狙い。
香港政府観光局(HKTB)によると2024年1月~8月の来港者数は前年同期比で43.7%増の2952万6742人。前年は新コロナ禍が明けたばかりで前年比が大幅に伸びるのは自然とも言える。
2018年の数字と2024年の数字を比較すれば、状況を正確に把握できる。HKTBは現在、来港者数を過去12カ月しか公表していないため、2018年1~6月上半期の報道発表と比較すると、2018年1~6月の3060万人に対して、2024年は2115万人と7割の水準にとどまっており、香港観光は戻りつつあるが戻り切ったとは言えない。
香港政府も主力産業である観光客の戻りが遅いことを懸念しており、来港者を増やすためのてこ入れ方策を考えてきた。李家超(John Lee)行政長官も16日に発表した施政方針演説の中で観光に対する施策を盛り込んでいた。それに先立ち、4月24日に開催された立法會で陳仲尼議員が申請表について、鄧炳強保安局長に対して入境に関する質問を行い、鄧局長が書面で回答。申請表の撤廃に前向きな考えを示していた。
申請表は、これまで、香港に向かう飛行機の中でフライトアテンダントが配布するほか、機内で入手できない時は、入境手続きカウンター手前に設置してある用紙を手に入れ、必要事項を記入して手続きを行っていた。既に機内での申請表の配布はストップした模様。同事務処の公式サイトにも「所有旅客在弁理出入境檢査時均毋須填寫及提交旅客抵港或離港申報表(All visitors are not required to complete and furnish arrival or departure cards when passing through immigration clearance points)」と記され、「出入境するときに申請表に記入し、提出する必要はない」と書かれている。
これにより、特に、観光客やビジネスマンにとっては「記入する」という面倒な事案が減ったことになるほか、これまでは入境時の長蛇の列に並ぶこともあったが、入境の可否を決める担当職員が、申請表に書かれている内容について確認する必要がなくなる分、待ち時間が減ることが期待されている。入境事務処側としても、職位の業務の負担が減ることになるというメリットがある。