
香港政府は 3月3日、認可を受けた新しいタクシー会社5社3500台が3月末から順次、営業を始めると発表した。
これまでと異なるのは、これまで課せられていた営業区域に大きな制限がない点。そのため、車体の色に制限がなくなるほか、「流し」ではなく、オンラインまたは電話で事前予約するのが特徴だ。これまでにない新しい取り組みとなることから、タクシー業界にとって、一つの転換点になるのではと期待が寄せられている。
運輸署(Transport Department)によると、現在、香港では1万8163台のタクシーが運行ライセンスを取得している。香港の場合、運行地域が厳密に決められており、それを越えて運行することは原則認められていない。香港島と九龍は赤、新界(New Territories)が緑、大嶼山(Lantau Island)は水色の3色に区分されている。
ただ、タクシー会社からは近年はライドシェアサービスのUberがサービスを行っており、運行環境が悪化しているとの声がある。3月頭には無許可のライドシェアサービスの規制を求めタクシー業界がストライキを起こす可能性を示唆するなど、タクシー業界を巡る動きは目まぐるしかった。
香港政府は、タクシーのサービスを改善させるため、営業区域を越えて運行可能なタクシーを認めることを決めた。そして昨年4月12日から5月31日まで、新規の受け付けを行い、15社が申請。そのうち、要件を満たしたのは12社で、審査委員会がさまざまな項目を審査した結果、合計点が高かった上位5社を選び、昨年7月31日に発表した。
選ばれた5社は、「Big Boss Taxi」「CMG Fleet Management」「新科發展(國際)(Sino Development (International))」「星群的士服務(SynCab Service)」「泰和管理(Tai Wo Management)」で、各社にはおおむね300~1000台、合計3500台分のライセンスが供与された。第1弾は、3500台のうちの4割に当たる1500台で、残り2000台は3年以内に投入する。
今回業務を始める車両のうち25%を電気タクシー(BEV)にするほか、車いすを載せることができるタイプや高級タクシーにすることが求められている。併せて、ドライバーへトレーニングを行うほか、GPS、運行を記録する装置、車線逸脱などを検知するシステムなどを車両に搭載する。
タクシー会社はオンラインの予約サービスを提供し、乗客はそのオンラインプラットフォームか電話で予約する。そのため、流しでの乗車はできない。加えて、多彩な電子決済サービスを提供やサービスホットラインの開設も求めた。
Big Boss Taxiは、全300台のうち7月までに180台を投入する計画。高級タクシーの車両は、「広州汽車(GAC)」の「E9」というワンボックス型の電気タクシー(6人乗り)30台を含む。車両の色は黒で、マッサージチェアも完備。ホテルでの送迎なども想定。一方、通常のタクシーは深い赤となり、4月までの予約アプリの運用を始める。
CMG Fleet Managementは「Amigo」というブランドで展開していく。総計1000台を投入し、400台を電気タクシー、200台を従来型のタクシーとする。車は、最近、香港の車市場で存在感を高めている中国のメーカーである「MAXUS」の「MIFA 7」という6人乗りの高級タクシーと「トヨタ」のタクシーを活用する。車体の色は蛍光ピンクと青色の線が入り、6月にサービスを始める予定。
新科發展(國際)は赤と緑のライセンスを保有。今回は「大黄蜂愛心車隊(Big Bee)」という名前で営業する。1030台の電気タクシーと投入する。メーカーは「吉利汽車(Geely)」の商用車ブランド「遠程汽車(Farizon Auto)」が販売する「幸福号」と「凱翼汽車」(Kaiyi Auto)」の「X3 Pro EV」が香港を走る。繁忙期の料金は通常の運賃の3割増とする計画。車体の色は黄色と赤のツートンカラーで7月に営業を始める。
星群的士服務は10年の歴史があり、既に香港の赤、緑、水色のタクシーライセンスを持つ。電気の高級タクシー(6人乗り)425台を導入し、その後、5年間で5000台にまで増やすことを目指す。車は「MAXUS」の「MIFA7」と「日産」の「ノートe-POWER」を使う。香港大学と提携してAI配車システムを導入する予定。車体は赤をベースにドアの辺りは白色でSynCabの文字や電話番号を記す。
泰和管理は50年の歴史があり、香港の全ての区域で営業している。今回は「JOIE」のブランドで運行。800台を導入するが、うち半分の400台は6人乗りの豪華タクシー、100台のバリアフリーのタクシーとする。車は「MAXUS」の「MIFA 7」、「トヨタ」の「ノア」と「コンフォート」。車両は300台が新車で、残りの車も3年以内に製造された車となる。車体の色はオレンジ色で、まずは3月末に480台が走り始める。