香港初の中国医学を中心とする総合病院「香港中医医院」(1 Pak Shing Kok Road, Tseung Kwan O, New Territories, Hong Kong)が12月11日、將軍澳(Tseung Kwan O)に開業し、外来診療から段階的に運用を始めた。香港政府と大学が連携し、中医学と西洋医学を融合した新しい医療モデルとなる。
香港の医療は、西洋医学と東洋医学の両輪で成り立っている。公立病院や私立クリニックでは西洋医学に基づく診療が主流だが、鍼灸や漢方薬などの中国医学も広く受け入れられ、地域社会に根付いている。近年は双方を組み合わせた「中西医結合」の取り組みが進み、患者の症状や体質に応じて柔軟に治療法を選択できる体制が整いつつある。香港の政府統計によると、西洋医学の医師は約1万6000人、中医師は約1万人が登録されている。
同院は敷地面積約4万2900平方メートルで8階建て。2021年に香港政府の全額出資で着工した。運営は香港浸会大学に委託し、新たに設立された事業主体の下、醫務衞生局(Health Bureau)監督の下で運営する。場所が駅から離れているため、バス停を増設し、新しいミニバス路線・康城駅(Loaus Park)から30分ごとに無料循環バスを運行する。
同院では医療人才、経験、知識、技術を集め、中国医学の理論と臨床経験を基盤に、西洋医学との統合を図りながら、より科学的な診療サービスを提供する。診療は中国医学の「弁証論治」の理念に基づき、患者の体質や症状に応じたカスタマイズ診療を行う。中国医学と西洋医学を組み合わせた診療方式でより全面的な診療を目指す。
開院初年度は、外来診療と日帰り入院サービスを中心に提供。診療科は、中国医学の内科・外科・婦人科・小児科・整形外科・鍼灸科の6科に加え、老年期障害や脳卒中リハビリテーションなど12の専門診療分野を設けた。
料金システムは公立病院と同様の「政府援助料金」と、私立病院に近い「市場価格料金」の2種類を導入し、患者の経済能力と需要により選択できるようにした。経済的困難を抱える患者向けには、部分免除から全額免除までを含む減免制度も設ける。
開院初年度には、料金の割引サービスも提供。料金の目安として、政府援助料金では外来診療は1回180香港ドル(全科)、250香港ドル(専門科)、リハビリテーションは380香港ドル。市場価格料金では、外来診療=450香港ドル~、リハビリテーション=700香港ドル~。
翌年度以降、診療分野を23まで拡大し、入院サービスも提供する。病床数も初年度の25床から段階的に拡大し、2030年には400床の病床を備え、外来は年間40万人規模の診療を行えるようにする。
同院は教育・研究面でも積極的な連携を進め、9月に中国医学関連の学部を持つ香港浸会大学・香港中文大学・香港大学の3大学と協定を締結した。さらにオーストラリアのウエスタンシドニー大学とも提携し、国際的な中国医学の研究・人材交流を促進する。
醫務衞生局の盧寵茂局長は「香港初の中国医学を中心とする病院の誕生は、香港の中国医学の質と発展を大きく前進させ、従来の医療サービスと異なり、西洋医学との共同診療も取り入れた、香港らしい医学診療を実現する重要な一歩になる」と述べ、「同時にローカル中国医学機関として重要なミッションを担い、診療にとどまらず教育・研究の拠点として中国医学の発展を推進し、世界を目指す」と意気込む。
病院窓口・公式サイト・電話のほか同院専用アプリで予約を受け付る。アプリは処方箋の確認や支払いのほか、介護者が複数の要介護者の情報をまとめて管理できる機能も備える。「政府援助料金」での外来診療の全科枠は開業1カ月全て満枠となり、盧局長が増枠を要請したという。
開院時間は9時~18時。日曜・祝日休院。