有料放送の「有線電視(Cable TV)」は5月14日20時、無料デジタル放送の「奇妙電視(Fantastic TV)」の放送を開始した。現在は広東語放送のみだが、2016年4月に開局した通信大手のPCCW傘下の有料テレビNOW TVの無料放送である「Viu TV」と最大手の「無線電視(TVB)」を合わせると最終的には3局6チャンネル体制になる。
香港政府はテレビのライセンスについて、亜洲電視(ATV)の免許更新をしないことを決定するなど、ここ数年、香港では放送網についてさまざまな出来事が発生したが、この奇妙電視の開局でひとまず騒動は終了となる。
しかし奇妙電視の開局までには紆余(うよ)曲折があった。親会社である有線寛瀕(i Cable Communications)の経営不振が話題となり、有線寛瀕の筆頭株主であった九龍倉集団(Wharf Holdings)は3月時点で9年連続の赤字を理由に、4億香港ドルを融資しない方針を決定。有線寛瀕は有料放送の免許が切れる5月いっぱいまでに新たな買い手を見つければ放送停止になる可能性に見舞われた。
しかし4月20日、有線寛瀕は永升(亜洲)(Forever Top(Asia))が親会社になることを発表。有線寛瀕は既存の株主に新株予約権を与えて割安で購入してもらい7億香港ドルを調達。九龍倉が保有する債権を株式化して3億香港ドルも調達し、合計で10億香港ドル分の資金が集まった。永升はこれで54.02%の筆頭株主となり、これまで73.84%を保有していた九龍倉は6.76%に引き下がる。
永升の主席を務めるのは香港最大手のデベロッパーの一つである新世界発展(New World Development)のトップの鄭家純(Henry Cheng)氏を中心に、同じくデベロッパーの遠東発展(Far East Consortium International)の邱達昌(David Chiu)主席、聯想集団(Lenovo Group)の創業者、柳伝志氏の投資会社である弘毅投資、広州のデベロッパーである富力地産の李思廉董事長などの強力なメンバーが名を連ねている。特に鄭家純氏の父、故鄭裕●氏はかつてATVに出資したことがあるなど親子2代でテレビに関わることになった。
現在は広東語チャンネル(チャンネル番号は77)のみで、ニュース、エンターテインメント、スポーツ、児童向け、教育、映画、ドラマなど、無料デジタル放送ならではの総合的な番組構成となっている。
ゴールデンタイムは毎日19時30分から30分間、ニュースが放送される。平日の20時30分~と21時30分~は、それぞれ1時間、ドラマ枠がある。土曜・日曜はほぼ1時間枠でのバラエティー番組が組まれている。目玉の番組は土曜の21時から俳優の杜?澤(Chapman To)さんが料理を作ったり、食べたりしながらトークショーを行う「杜●澤食住上」という番組だ。芸人のような話芸を持つ杜●澤ならではのプログラムといえる。
専門家の間では「内容は物足りず、ATV路線に似ている。人材や資源不足を感じさせる」と失望感をあらわにしている見解が多い。無料放送では広告収入が生命線となるため、現在は割安でCM枠を販売し収入拡大を図っている模様だ。さらに、香港政府との取り決めで放送開始から2年以内に24時間の英語放送(チャンネル番号は76)も行わなければならず、現在、準備を進めている。
鄭裕●=丹にさんづくり。杜●澤=さんずいに文