香港のバス会社最大手の九龍巴士(一九三三)(KMB(1933))は運輸署に1カ月800香港ドルのKMB専用乗車パス「全線通」の販売を認めるよう申請していたが、その計画が批准された。今後、細かな調整を行い、早ければ2018年2月に発売の予定だ。
香港では、地下鉄(MTR)のみ使う人、MTRとバス、MTRとミニバスを組み合わせて通勤する人は少なくない。しかし、特に新界(New Territories )から香港島に通勤する人は、乗り換えがなく、路線のほとんどを高速道路を走るバス路線を利用する人も多い。運賃を見ると、例えば、KMBの978番粉嶺(Fanling)と湾仔(Wanchai)とを結ぶ978番は片道24.3香港ドル=往復で48.6香港ドルとなる。月22日出勤の場合、1069.2香港ドルに達する。968番の元朗(Yuen Long)-銅鑼湾(Causeway Bay)間の場合は同23.4香港ドル。往復46.8香港ドルとなり1カ月当たり1029.6元となる計算で、全体的に交通費が安いといわれる香港でも決して低いとは言えない。
発売価格は800香港ドルを予定している。つまり、上記の路線の利用者は約25%の運賃をセーブすることが可能になる。林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官が10月11日に発表した施政方針演説で、1カ月400ドル以上の交通費を支払っている人に対して300香港ドルを上限とする25%の交通補助金を支給することを表明しており、実際に政策が適用された場合の実質的な負担は500香港ドルになり、より負担が軽くなる。
全線通は香港内にあるバースターミナル50カ所で販売する計画だ。利用者の利便性を考慮して八達通(Octopus)を通じて料金の決済をすることになるため、プログラムなどの技術的な問題を解決する必要がある。そのためパスの発売は早くても来年2月になる見込み。
パスの恩恵を受けられる対象となるのはKMBが運行している路線だが、24時間運行、MTR各駅に接続する路線、税関に接続する路線とと沙田競馬場(Sha Tin Racecourse)に向かう路線は除く。今後の利用者の乗車データなどを分析し、海底トンネルを通る専用パス、同じ地域内など小さなエリア限定パスなど需要が高いと見込めれば、その状況に応じたパスの発売も視野に入れたいとしている。ただし、1日に当たりの乗車の回数を制限にするか、乗り放題にするかどうかは未定だ。
MTRがここ数年、毎年のように値上げをして香港市民の不評を買っているものの、それがバス利用者の大幅増にはつながっていない。MTRが路線拡大を拡大しているため経営環境は決して良いとはいえない。この全線通を通した利用者拡大で経営環境の改善となるかに注目が集まる。