香港で最大部数を誇る観光ガイドブックを発行する長空出版(スカイパブリッシング)は4月15日、ガイドブック「終極天書」シリーズの東北版として、2016-17年版を書店に並べた。
日本に関する特集なども頻繁に掲載される香港のメディアの中で、同社が発行する「終極天書」は表紙に光沢感のあるキラキラ加工を施し、世界30地域以上の地域版を発行。日本だけでも、北海道、東北、東京、東京近郊、中部、関西、山陰山陽、四国、九州、沖縄と10の地域版を出し、日本版の合計発行部数は84万部に上る。東京版は年に5回の改訂、京阪神は4回の改訂があり、東北版は震災以降ストップしていたものの、今回5年4 カ月ぶりに改訂されることになった。昨年7月に開催されたブックフェアで、同社のみが香港で発行する東北版のガイドブックを求めた消費者からの声が多くあり、社内で改訂版を出す提案をして、発行にこぎ付けたという。
東北版を担当した謝秀富さんと許俊傑さんは今年1月に東北を約1カ月かけて取材し情報の更新をしたが、今回の第9版には、巻頭に15ページにわたる特集「東北復興応援団」を設定した。日本側からは、「震災を振り返るよりも、今の東北を」という声もあったが、この特集の中では震災当時の写真で様子を振り返るページもある。
許さんは「目の前で津波を受けた石巻の上山さんに当時の様子を聞いて、一緒に再建できなくて申し訳ないという気持ちになった」と伝えたところ、逆に「頑張って」という声を掛けてもらい、「東北人の優しさと熱さを感じた」と話す。今回の取材の前には自ら福島を訪れ、特集の中には放射能測定の指数を示した表もあり、「香港の指数が東北各地の何倍も高い」ということにも触れている。
同書の一部に「東北の方へ」とし、「我々長空出版は震災の皆さんとともに歩み、復興に力を尽くしたいです。自分事ですが、留学期間に私を育ててくれたこの国への恩返しでもあります。ありがとう、がんばれ、日本!」(原文ママ)というメッセージが日本語でつづられている。
改訂版発行にあわせ、JNTO香港事務所は、東北観光推進機構と連携し、記者発表と消費者向けセミナーを、4月15~17日、誠品書店で実施した。Q&Aセッションや東北の日本酒、リンゴジュースの試飲体験などを行い、約500人の香港一般市民が楽しんだ。