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歴史あるゴルフクラブを公営住宅用地へ 政府が計画、ゴルフ場側は憂慮

毎年開催されている香港オープン

毎年開催されている香港オープン

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 香港政府発展局(Development Bureau’s)の土地供応専責小組(Task Force on Land)は2月20日、今後の香港の土地開発のあり方や方向性ついてのリポートを公表し、粉嶺(Fanling)の西にある香港哥爾夫球會(Hong Kong Golf Club)の一部を公営住宅用地として用途変更する案を提示した。

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 香港ゴルフクラブは1889年5月10日、皇家香港哥爾夫球會(The Royal Hong Kong Golf Club)として創立。今年で130年の歴史を誇るゴルフクラブだ。最初は快活谷(Happy Valley/昔はこの漢字を使った)にコースが作られ、現在の粉嶺のコースは1911年に18ホールで完成した。その後、1931年と1970年に拡張し、現在は140ヘクタールの土地に3コース、54ホールを構える。

 香港の財界人の多くがメンバーで、個人会員として申し込んでも順番待ちのリストが長く、最低10年以上待つとされ、法人会員として申し込んでも億単位の金額が必要とされる格式の高いクラブだ。毎年11月には、1959年から行われているゴルフトーナメント「香港オープン」が開かれる。ヨーロピアン・ツアーとアジアン・ツアーの共催で、2018年からはゴルフ用品メーカー「本間ゴルフ」がタイトルスポンサーとなっている。歴代優勝者には、グレッグ・ノーマンからロリー・マキロイまでゴルフファンなら必ず知っている名前が並ぶ。

 香港は慢性的な住宅不足に陥っており、いかにして住宅地を確保することが課題となっている。香港政府は2018年10月に大嶼山(Lantau Island)南東部の大規模な埋め立てを明らかにしたことも記憶に新しい。今回の計画によると140ヘクタールの土地に粉錦公路(Fan Kam Road)という道路が横断しているが、道路の東側32ヘクタールを利用したいとしている。東側は、ゴルフコースの一部と駐車場などになっており、ゴルフや生態系への影響も少ないからだ。

 ゴルフクラブと土地の契約は2020年8月まで。満期後は、140ヘクタール分は2027年まで契約を延長し、32ヘクタール分の契約更新を行わないが2023年までは移行期間として香港ゴルフクラブに時間的猶予を与える。香港政府はそれと並行して1年半から2年ほどかけて実際に公営住宅を建設するための研究を行う。2023年には正式に土地を回収し、最も早くて2024年に公営住宅の建設に着工し、2028年の入居開始を目指すという。建設戸数は4600戸を想定している。172ヘクタール全てを住宅用地にした場合、1万3200戸の新築住宅を供給できるとしている。

 香港高爾夫球總會(The Hong Kong Golf Association/HKGA)は現在、30以上のゴルフ大会を運営しており、それらに影響が出るほか、香港オープンが国際的なプロトーナメントの大会として組み込まれなくなるかもしれないと憂慮。1万5000人の会員に大きな影響が出ると反発している。会員も香港政府と関係の深い財界人が多いこと、自然を失うことから、スムーズに進むかどうかは予断を許さない状況だ。

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