定番の香港観光スポットの一つとして人気も高い山頂(The Peak)への交通手段である山頂纜車(Peak Tram)は7月22日より、運行を再開することが決まった。改修に伴い、4月23日から運休していた。
ピークトラムは1888年に運行を開始し、現在は年間600万人以上の乗客数を誇る。開通当時の香港はエアコンや扇風機はもちろん無かったため、蒸し暑い香港の夏を少しでも快適に過ごすには標高の高い山のほうに行くしか手段が無かった。そこに海抜552メートルある山頂にリチャード・マクドネル総督が別荘を作り、富裕層もこれに合わせて住み始めた。標高が100メートル上昇するごとに気温は約0.65度下がるため、標高400メートルでも2.6度下がるだけだが、開業当時は自動車の黎明(れいめい)期でまだ大衆化しておらず、代わりに駕籠(かご)が行き来していた時代だった。そこで、鉄道を使って市街と別荘を往復する手段として建設されたのがピークトラムという誕生の背景がある。
現在のピークトラムの運行システムの導入は30年前の1989年で、それに関連するロープなどを含め老朽化していたことから2018年、改修に着手。総工費6億8,400万香港ドルを投入し、段階的に工事を進めながら2021年の完成を目指している。全てのけん引・制御システムを完全に交換し、新しい軌道レールの敷設、軌道路盤や橋りょうを強化する。混雑のピーク時には、行列が始発・終点の花園道(Garden Road)駅から公共スペースである聖約翰大廈(St. John’s Building)の外側までせり出していたが、2両編成で120人乗りのトラムを同じく2両編成で75%増の210人乗りに大型化し、待ち時間を70%減少させる。さらに、花園道駅を1300人収容の空調設備を備えた待合エリアも設けることで、できるだけ行列ができないようにする。その改修に合わせて、駅周辺の舗装の再施工、各種路上設備、看板、手すりの更新など体の不自由な人へも配慮する。今回は、改修の途中でありトラム自体は花園道駅に設置された従来よりも70メートルほど山側にある臨時プラットホームからの運行再開となる。
これにより、中環(Central)のフェリーターミナル8番ふ頭を出発し、花園道駅までを結ぶ15Cのバスの運行が再開する。
再運行に伴いピークタワーでは「Summer Fun」と題して9月1日まで、ワークショップや中国ごまのデモンストレーションなどが行われる予定だ。次回の工事による運休は2020年夏から5か月間を予定し、2021年初頭から新システムでの運行を始める予定。