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アジア・ソサエティーが「香港の集合的記憶」を題材に展示 30周年記念で

民謡「茉莉花」を扱った楊嘉輝さんのインスタレーション

民謡「茉莉花」を扱った楊嘉輝さんのインスタレーション

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 今年で30周年を迎えるアジア・ソサエティー香港センター(9 Justice Drive Admiralty, Hong Kong)が現在、30周年記念展示「Next Act: Contemporary Art from Hong Kong 」をChantal Miller Galleryで開催している。

 30という数字は人の年齢で言えば成人として成熟し、ターニングポイントを迎える年齢であると多くの文化で捉えられていることを前提に、過去を振り返り、現在を次のステップへの準備期間とし、より有望な将来へと向かう時期にあるという解釈をベースに作品を紹介している。「香港の集合的記憶」を題材に、香港の社会的・歴史的な発展を振り返ることに加え、展示作品を通じて観客は新たな視点で過去を振り返ることを促され、未来への想像力を引き出される内容に仕上げた。同展では香港ローカルのアーティスト10人がインタビューやフィールドワークなど、さまざまなリサーチ手法を制作へのインスピレーションの手がかりとし創作した作品を展示する。リサーチをベースに置くことで、「アートとは感覚的なもの」という固定観念を壊し、アートが批判的思考の産物でもあることを提示する試みだ。

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 香港出身のサウンド・ビジュアルアーティストで、2013年には香港アーツ・デパートメント・カウンシル年間最優秀作家賞(メディア・アート部門)、2015年にはBMWアート・ジャーニー・アワードを受賞している楊嘉輝(サムソン・ヤン)さんは中国の民謡「茉莉花」に関する大規模なリサーを行った。作品「The World Falls Apart into Facts」では、今では広く中国で愛され歌われているこの民謡のバージョンが実は中国への通商交渉団の一員だったイギリスのジョン・バロー初代准男爵が中国から持ち帰り自身の旅行記として歌ったものがヨーロッパに広がり、中国へ逆輸入されたものだったことが明らかになったという。この民謡の系図学を異なる文化が出合う時のケーススタディーとしたほか、ケニーGさんの音楽の香港ポップスへの影響などを取り上げたビデオインスタレーションを通じて、文化的純正や真性とは何か、そうしたものが存在するのかということを問う。

 北京出身で香港育ちの武雨濛(シシー・ウー)さんは2000年に起きた自閉症を患う男児、●文翰さんの謎多き失踪事件を扱った。両親との夕飯後、地下鉄駅で母親の手を振りほどき走り去ってしまった●文翰さんは当時15歳だったが知能は2歳児程度だったという。香港と中国大陸の境界である「羅湖」駅の入境検査に立ち寄ったことが分かっていて、中国側が香港側に引き渡そうとしたところ香港側が突き返し、その後の行方が分からなくなっている。入境管理局の職員との接触がありながらも発見されないまま20年が過ぎた謎の多い事件だ。武雨濛さんは?文翰さんが現実世界に戻って来たという設定でショートフィルム「 Unfinished Return of Yu Man Hon」を制作。記憶というもののはかなさを伝えると同時に、通常、死や喪失と関連づけられる?文翰さんを、悟りを開いた存在としてショートフィルムで捉えている。

 展示は9月27日まで。

●=まだれに、臾。