開業1年を迎えた「K11 MUSEA」にこの秋、「K11芸術文化センター(Art & Cultural Centre)」「K11彫刻公園(K11 Sculpture Park)」が登場した。7階の屋上「ボヘミアンガーデン」の下には何ができるのかと関心を集めていたが、6階に広がる屋外オープンスペースと多目的ホールは10万5000平方フィートあり、「COBO HOUSE」「COUCOU RESERVE」「Fine Wine Experience」など、レストラン数店と合わせて「寛ぎのアート空間」に仕上げた。
屋内と屋外をつなぐ300以上のガラスシリンダーが、ビクトリア湾のハーバーフロントを生かした美しさを演出し、随所に設置されたスピーカーから「心地よい」サウンドが流れる。自然光を取り入れることで、来館者が「都市の喧騒(けんそう)での疲れをリセットできるようにした」という。
K11芸術文化センターは、多目的文化空間に40以上の国際的な作品を置く。創設者のエイドリアン・チェンさんのディレクションの下、香港の港に面した文化にインスパイアされたコレクションを収集し、キュレーションを行っている。多言語、多文化、グローバルである香港を表現し、活躍するミレニアル世代を刺激して、創造性、文化、イノベーションの議論を促すことを目的としている。
エスカレーターで上った空間に設置したのは、草間彌生さんが2004年発表の作品「再生の瞬間」。深紅色の突起物が床から力強く生えているような作品で、その背景にはアメリカの現代美術家メアリー・ウェザーフォードさんの作品で、リネンにフラッシュライトとネオンが織り込まれた作品と組み合わせて展示する。
屋外スペースには、「美術館が所蔵するレベル」の作品をオアシス空間に配置する。独ベルリンを拠点に、巨大な物体と空間をキャンバスに工業用のスプレーガンを使いダイナミックな作品を生み出すアーティストのカタリーナ・グロッセ(Katharina Grosse )さん、ニューヨークのカウズ(KAWS)さん、オーストリアの現代美術家エルヴィン・ヴルム(Erwin Wurm )さんなどの壮大な彫刻作品がある。エルヴィン・ヴルムさんの作品群は、日常生活のありふれた行動、人の体に関する彫刻から迫る作品。「Half Big Suit (Verschnittskulptur-Serie) 」は、スーツを着た人物が足を宙に伸ばし、上半身の半分が欠けているようなコミカルな状態で操作され、固定されている。ハーバーサイドには植物を並べ、「ただ景色を眺めるだけでもリラックスできる空間」を目指す。
屋内の多目的スペースは期間ごとにさまざまな展示やオークション作品を展開。現在は、フランス人の若手アーティスト、ネイル・ベルーファさんの作品を展示している。初となる香港での展示「Long Time No See」は、「アルゴリズムの公式は私たちの愛の原動力を予測できるのか」をテーマに、ビデオとインスタレーション「Life as Data」で展開。技術的な力を芸術的な文脈に織り込むことで、デジタル技術が日常生活や人間関係にどれほどの影響を与えているかを伝えようとした作品となる。
営業時間は10時~22時。入場無料。