香港の文化発信拠点ともなっている中環のPMQ(S312 & S313)で現在、台湾をテーマにしたイベント「台湾味市集」が開催されている。「台湾月間」をうたい、映画や音楽、アートイベントなどが展開される「台湾アートフェスティバル」の一環。昨年は5月にPMQのグランドフロアであるオープンスペースを使って大規模に開催した。今年はコロナ禍で延期しながら、開催方法について検討を重ねてきた結果、PMQ内の2つの区画でポップアップショップとワークショップ「台灣味職人文化學堂」を展開することになった。主催は、台湾を深堀りで紹介するメディアを香港で運営するtripTaiwan社で、台湾の政府機関やエバー航空、誠品書店なども協力している。
ポップアップショップでは、今回香港初の販売となるアイテムも含め、パッケージなどにもこだわり、ストーリー性があるアイテムを中心に30種類以上の商品を販売。台北から台南、宜蘭、南投、苗栗、屏東などからグルメや商品を集めた。基隆のクラフトビールは全部で4種類。黒糖やかんきつ類などのフレーバーのビールを2本ずつ、基隆港のイラスト付きのクラフト素材のパッケージに入れて販売する(110香港ドル)。スナック類は、お茶味のヌガー(茶軋糖)や米を使ったスナック類(45香港ドル)を並べたり、「芳醇な香りとフルーティーな甘みがある」という温暖な気候の山で作られたコーヒー「屏東コーヒー」(5袋75香港ドル)なども。一番人気のアイテムはしょうゆやチリソース、汁無しのシンプル麺のセット(350香港ドル)。
その距離の近さから年に数回台湾を訪れる香港人も多く、現在はコロナ禍で渡航できないこともあり、スローガンには「跟著台灣好物去旅行」を掲げる。「このイベントのアイテムを通じて、台湾を旅した気分になってほしい」と、各種アイテムを詰め込んだ8種類の商品を入れた福袋(388香港ドル)も販売する。
ポップアップショップの隣の区画では「台灣味職人文化學堂」を展開し、4組のアーティストや団体が伝統工芸などを紹介するフロアを展開。アミ族など、台湾の16の先住民族の伝統的な衣服のデザインを折り紙で表現した作品を展示する「心象工作室」、鉱物や土壌の顔料を使った作品を制作する洪浩倫さんの作品を紹介する。
「文化銀行」は、環境に優しいスカイランタンを紹介。台湾の観光シーンでも時折見るスカイランタンは、その美しさが人気の一方、深刻な廃棄物問題を抱えている。紙とワイヤー、竹などでできたスカイランタンは燃え尽きると落ちてゴミになるが、環境に優しいスカイランタンの素材は紙だけのため、空で一定の高さに達すると完全に燃え尽きる仕組み。伝統文化の保護と環境の持続可能性を追求した取り組みとして紹介する。
タイワンベニヒノキを使った木工工芸を展開する「木器窗花杯●」は釘や接着剤を一切使わない伝統的な日本の組子技法を紹介。今回のイベントのため、窓枠サイズに合わせたオリジナル作品も香港で披露し、光の加減で通路に組子模様を映し出すなど心地よい空間づくりに一役買っている。彰化県の鹿港の近くにある工場の紹介や、作品を海外に広めたいと参画した青年の言葉など、さまざまな角度で工芸職人の技術に迫る。
各種ワークショップは無料で参加できるが、募集と同時に満席になる状態が続いており、別途制作キットなどもショップで販売する。
主催のtripTaiwan創業者キャサリン・イック(易欣齊)さんは「もともと台湾が大好きで企画し、昨年は大型のイベントを開催できた。今回は2つの区画を借りて小規模になったものの、台湾らしさが詰まった商品を選んだ」と話す。「職人たちが来られなかったことが非常に残念だが、香港の人々も台湾へのミニ旅行を体験してもらい、台湾をより深く学んでもらえれば」と呼び掛ける。
●=執かんむりに土
営業時間は12時~20時。11月19日まで。