香港の市区重建局(URA)と大手デベロッパーの華懋集団(Chinachem Group)が共同で管理・運営する「中環街市(Central Market)」(80 Des Voeux Road, Central, Hong Kong)が約3年の工期を経て、8月23日にソフトオープンした。第3級歴史的建造物で、5億香港ドルを投じた修復・再生作業の第1段階が完了し、8割以上の入居が決定している。
域多利皇后街と租庇利街の間に位置する中環街市は、総床面積約12万2000平方フィート、建物の長い歴史を物語るオリジナルの建築要素を残すだけでなく、柔軟でインタラクティブなデザインを施した。賃貸可能面積は約5万6,500平方フィートで、小売店が70%、飲食店が30%を占めており、食事、ショッピング、仕事、レジャー、娯楽、文化・教育の要素を一つ屋根の下に組み込んでいる。100以上の小売店や飲食店、1000平方メートルの緑のオープンスペース、さまざまなアート展示やパフォーマンス、文化的活動のためのコミュニティースペースなどで構成する。現在は飲食店が中心のグランドフロアはほぼオープンしているものの、1階・2階はまだ半分くらいが営業をスタートしていない。2階はヒルサイドエスカレーターに続く設計にした。
中央の大きな広場とアトリウムには、プロジェクションシステムとサウンドシステムを設置し、ストリートパフォーマンスやイベントとしても利用できる造りになっている。約100席のパブリックスペースも用意し、無線LANを完備した。
グランドフロアは主に飲食店が出店しているが、フードコートのようであるものの、統一されたデザイン、ワインボトルを配置したキャビネット、椅子のスタイルもさまざまで、「そうした雰囲気を感じさせない」造りに仕上げている。香港人気のクラフトビール「麥子麦酒 」、香港発のクラフトジン「白蘭樹下」のほか、はやりのワインカクテルなども提供なども提供するワインバー「Winelog」も出店した。
フロア内で異彩を放つすしカウンターも設置し、おまかせすし(950香港ドル~)を提供する区画の横には、生酒をタップで飲めるサーバーもある。日本酒は1杯88~128香港ドルで提供する。「中環街市のリニューアルに対していろいろな日本食を扱う店がプレゼンしたと聞いているが、このタップの生酒に興味を持ってもらったと思う」と居酒屋を含む、すしと酒エリアを担当するWAKOの名誉●酒師區梓楓さんは話す。
乾物店「漁民辨館」は今年創業したばかりのブランドで、香港が無名の漁港からアジアの世界都市へと発展した香港には、漁師の姿があったことに敬意を表し、乾物を中心にストーリー性ある商品を集めた店。エビやホタテの干物をはじめ、蝦●醤(エビペースト)(89香港ドル)やXO醤(99香港ドル)などのソース類、花膠(魚の浮袋)や蟲草花(冬虫夏草)など薬膳スープに使うアイテム(89香港ドル~)も並べた。
ほかにもトラムグッズを扱う「叮叮辨館」や、香港のレトロモチーフの商品が並ぶ「淳記手作」、環境に優しいライフスタイル商品を扱う「Slowood」、深水●エリアで日本の雑貨なども扱うコンセプトショップ「MIDWAY」などが入居しているなど、香港の時流をつかんだ店舗展開になっている。
スタートアップ企業がここで足元を固め、ビジネスの第一歩を踏み出すことを期待していることから、出店する小売店に対しても、包括的なPOSシステム、基本的な什器や備品を提供し、「魅力的で柔軟」なリースプランを提供する試みもある。グランドオープンは11月を予定。
営業時間は10時~22時。
蝦●=米へんに羔。●酒師=口へんに利。深水●=土へんに歩。