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香港と中国本土を結ぶ「城際直通車」事実上廃止へ 代わりに東鉄線を増便

長く中国本土への直通列車の始点となってきたホンハム駅

長く中国本土への直通列車の始点となってきたホンハム駅

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 香港地下鉄(MTR)は、羅胡(Lo Wu)経由をして紅●(Hung Hom)と中国本土を結ぶ在来線を使った列車である「港鐵城際直通車(MTR Intercity Through Train)」を事実上廃止とする見込みで、香港と中国本土を結ぶ鉄道は高速鉄道に集中させる。

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 2018年の高速鉄道開通前までは、香港と中国本土を結ぶ鉄道の顔だったのは城際直通車だった。城際直通車は、香港と広州を結ぶプロジェクトが1905年に始まりで、1910年に香港側が先に開通し、最終的には1916年に全面運行を始めた。その後、第2次世界大戦などで何度か香港と中国を結ぶ直通列車が途絶えたことがあったが、香港と中国を結ぶ鉄道として重要な役割を担ってきた。

 現在は新型コロナウイルスの影響で運航停止中だが、紅●-広州東(1日9本)、紅?-北京(1日1本)、紅●-上海(1日1本)の3路線があった。東鉄線と城際直通車は基本的に同じルートを通るが、線路自体は上り1本、下り1本であるため、過密運航をしている東鉄線(East Rail)は、香港内を比較的低速で運行している城際直通車が走っている時は追い抜くことができない。その結果、直通車が走る時間帯は東鉄線の運行頻度を上げることができず、事実上の間引き運転状態になっていた。合計11本分の直通車が廃止になることで、大幅に増便することが可能となる。

 紅●-金鐘(Admiralty)が5月15日から延伸されたことで、東鉄線沿線に住む人たちにとっては香港島がより近くなった。ただ、従来の12両編成から、将来的には9両編成になるため輸送能力の減少や車両内の混雑が懸念されていたが、増便することでそれを補えるメリットがある。

 廃止の理由として高速列車の影響がある。2018年は1日1万1700人が直通車を利用していたが、2019年には6900人まで減少。列車本数も、往復で24本あったが18本にまで減便していた。今後も乗客数が増える見込みは薄いことから、一定の役目を終えたという判断になった。

 廃止により中国本土へは高速鉄道を利用することになる。西九龍駅(West Kowloon Station)から広州南駅までは約50分で到着するが、広州南駅は郊外にあることから、広州中心部に出るのに地下鉄で約30分はかかるため、使い勝手が悪かった。元九広鉄路(KCR)主席で、現在、立法会議員を務め、立法会交通事務委員会の委員も務める田北辰(Michael Tien)さんは「基本的に直通車は廃止となるが、広州南駅を城際直通車の始発・終点である広州東駅まで延伸させる予定」と語っており、2023年に開通することで利便性を向上を図る予定だ。

 直通車が正式に廃止となった場合を想定して、政府は現在の直通車の車両を保存し、博物館などに展示することも視野に入れている。

 ●=石へんに勘。

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