香港故宮文化博物館のギャラリー8で現在、リヒテンシュタイン王室の所蔵を展示する特別展「Odysseys of Art: Masterpieces Collected by the Princes of Liechtenstein(藝苑尋珍-列支敦士登王室收藏名品)」が開催されている。400年以上の歴史を持つリヒテンシュタイン王室のコレクションは世界最大のプライベートアートコレクションともいわれており、3万点の中から選定された絵画、版画、タペストリー、彫刻、装飾芸術品など124点を展示する。
開幕時にはリヒテンシュタイン家のハンス・アダム2世公爵も来港
同展では、リヒテンシュタイン公爵家の美術品収集の歴史に新たな光を当て、美術品への情熱がコレクションを形成した5人の公爵にスポットライトを当てる。王侯が収集した中国陶磁器や庭園を通じ、中国の芸術と文化がヨーロッパの装飾芸術や建築に与えた影響について知ることができる内容に仕上げた。
同展開催に当たり、リヒテンシュタイン公国の国家元首であるリヒテンシュタイン家のハンス・アダム2世公爵も来港。「我々のコレクションは、王室一族の世代を超えた価値観を象徴するもの。香港政府の支援を受け、我が家のプライベートアートコレクションを香港故宮博物館と共同で、香港の人々や地域からの訪問者に紹介できることを光栄に思う。東西を超えた初期のユニークな文化交流を紹介するこの画期的な展覧会が、今後も文化や世代を超えた相互理解と対話を育んでいくことを願う」とオープニングセレモニーであいさつした。
今回の展示品は絵画、版画、タペストリー、彫刻や装飾美術品など多岐にわたる。数世紀にわたって収集されたリヒテンシュタイン王子のコレクションでは、ルネッサンス期から19世紀後半までの傑作絵画を約1600点所蔵する。その中でも注目を集めているのはバロック期の有名画家であるピーテル・パウル・ルーベンスとアンソニー・バン・ダイクの作品で、鮮やかな色彩とダイナミックな構図を特徴とする。今回は36点を展示するが、これは香港で開催する展覧会としては最大規模。バロックの巨匠ルーベンスは、日本では「フランダースの犬」に登場する主人公ネロが最後に見た祭壇画を描いた画家として知られているが、バロック期に宮廷画家として活躍した人物。
18世紀後半のヨーロッパの庭園は、中国形式や装飾などを反映していたものもある。1795年に建てられたレドニツェ(チェコ)の中国館の内部には大きなタペストリーが掲げられていたが、展示するタペストリーは1848年により豪華な装飾を施して再建された。1892年に取り壊されたものの、タペストリーや漆器、時期などの調度品は保管されてきたという。
ほかにも上海豫園を描いた水彩画も数点あるが、これらの絵からも当時ヨーロッパの上流階級の建物や庭園には中国美術への関心が高かったことが分かり、17世紀以降中国の芸術が室内装飾の一つになっていたことも裏付けている。
来年1月には、展覧会のキュレーターによるテーマトークを開催するほか、リヒテンシュタイン家の美術品収集に対する独自のアプローチや芸術・文化における中国と西洋の歴史的なつながりを紹介する予定。
開館時間は10時~18時(金曜・土曜は22時まで)。火曜休館。入館料は120香港ドル。来年2月20日まで。