香港島の西側、石塘咀にある26階建てのホテル&レジデンス「One-Eight-One」内に5月17日、「The Praya(ザ・プラヤ)」(Level 3, 181 Connaught Road West, Shek Tong Tsui, Hong Kong TEL 3181 1666)がオープンした。
朝食は粥(かゆ)やサンドイッチなどの軽食メニューを提供し、ランチは粥、麺、ご飯などに加えてアラカルトメニューも用意。メインに70香港ドル追加することでセットメニューにできるなど、ディナーのアラカルトに力を入れつつも、ホテル内のレストランとして終日、メニューを提供する。
同店は、「中国料理の伝統とグローバルな料理の影響を組み合わせた新しいコンテンポラリーレストラン」として、香港の中華料理を「世界の料理の影響が混ざった料理」と再定義する。
店名の「プラヤ」は、古代ポルトガル語で「水辺」を意味する。レストランがある石塘咀(Shek Tong Shui)のウオーターフロント・プロムナードの名前にちなんだもので、遊歩道は植民地時代の香港の近代的繁栄の象徴でもあることから名付けた。
内装は、滑らかで流線型の壁と丸みを帯びた角が特徴的。半透明のガラス窓や金属製の壁かけなど1960年代当時の建築の特徴を現代風にアレンジする。白い壁に黒いラインをあしらい、市場の庇(ひさし)をモチーフにした要素などを込めた。床は赤と白のテラゾーブロックで構成する。60年代の香港では一般的な建築材料で、建築の手すりや階段によく使われていた。レストランフロアには大理石を使ったモザイクタイルも敷く。
コンテンポラリーな広東料理は、100種類にも及ぶ発酵ソースを使い、地元の食材を組み合わせる。香港生まれでオーストラリア育ちの料理長サミュエル(Samuel Ng)さんは「料理は無限の可能性を秘めた芸術。完璧はなく、常に進化している。私はいつも 食べ歩きをして、インスピレーションを探し求めている」と話す。
代表的なメニュー「潮式滷水牛五味」(788香港ドル)は、 ブリスケ、スジ、トリッパ、ショートリブ、牛タンなどを5カ月かけて取った濃厚なスパイスが利いたしょうゆの煮汁「ロースイ」鍋で煮込んだ料理。「葱油餅」(128香港ドル)は、ベースは一般的なものと異なり、発酵に時間がかかるサワードウブレッドを使うことで薄い生地のピザのような食感を出す。自家製ソースは、青ネギやエシャロットなどさまざまな種類のネギとコマ油で作った。
「魚湯粉皮●魚頭」(888香港ドル)は、ハタハタ魚の頭の煮込んだ白身魚のスープに、自家製のサツマイモで作ったビーフン、豆腐で作るメニュー。同店で使う魚は全て香港ローカルで仕入れたもの。魚好きなシェフの友人が開いた深海魚の高級養魚場から仕入れている。
土鍋で提供する「照燒頭抽鶏●仔菜飯」は、下準備にも時間をかける。鶏肉はまず塩に漬け込み、その後2~3日かけて乾燥させる。米は、豚の油であるラードとキャベツやタマネギなどの根菜類10キロから作る野菜のブイヨンで炊く。炒めた鶏肉は、焼いたご飯に加える。ほかにもシェフの祖父が30年前に保存していた塩レモンと、オリーブのピクルス、自家製の塩漬け野菜で味付ける「鹹檸檬欖菜●鹹鮮馬友」(688香港ドル)は、塩漬けにした乾燥熟成の魚のことで、これをご飯に載せて炊くメニューも用意した。
中国の五行をモチーフにしたシグネチャーカクテルも提供する。チーフミクソロジストで、ビバレッジマネージャーのポール(Paul Chan)さんは、香港のクラフトジン「Perfume Trees Gin」のブランドアンバサダーとして培った経験を元に、卵、蓮の実、冬瓜、金華ハムなど、カクテルにはあまり使われない中国の伝統的な食材も使い、新しいカクテルを考案。「金」はスパイシー、「水」はソルティーといった具合に、それぞれの元素の性質を表現する。例えば、「金」のカクテルの一つ「ホットセンチュリーエッグ(尖椒皮蛋)」は、ジン、オニオン、ペッパーベルモット、カンパリ、保存卵の塩水で、従来のネグローニをスパイシーにアレンジしたり、「フラワー・オブ・ライフ(生命之花)」は 香港のジン、サンザシ、ブルーベリー、マリーゴールドの蜂蜜を使って、「神秘的な味わい」を求めた。
営業時間は7時~23時(朝食=7時~11時、ランチ=11時~15時、ディナー=18時~23時)。
●=火へんに屯、●=保かんむりに火、●=火へんに考。