中環にあるカルチャースポット「大館(Tai Kwun)」で6月30日、ネオンサインにスポットを当てた「霓續(Vital Signs)」が始まった。香港の100万ドルの夜景には欠かせない要素だったネオンサインについて、視覚的なものだけでなく、文化的な背景なども知る機会となっている。
大館は2018年に完成した施設で、元々は旧中央警察署や官舎、監獄だった。大規模改修を行い、監獄をそのまま保存して観光用にしたほか、展示施設、ショッピングモール、レストラン・カフェなどがある総合的なカルチャー施設として生まれ変わった。今では香港市民と観光客両方が利用する観光スポットにもなっている。
この集客力を生かして大館ではさまざまなイベントを開催する中で展開する同イベントは、いわゆる「電飾」をテーマにしたもので、香港では、店名やブランドの看板だけではなく、夜総会、クラブといった香港のナイトライフ関連施設などの内装にも使われてきたもの。
香港の歴史を見ると、上海系の人たちが香港経済に大きな影響を与えていた。ペニンシュラホテルやキャセイパシフィック航空なども戦争の影響などから上海から香港に逃げ、香港で成功した事例だが、ネオンサインについても同じで、多くの職人が香港に移住してきた。
戦後、香港が急速に発展していく中で、知名度向上と客を呼ぶために活用されたのがネオンサインだった。レストラン、質屋、サウナ、雀荘(じゃんそう)、衣料、漢方、ショッピングモールなど多岐にわたる。形状も、四角のみならず、丸いのが存在するなど画一的ではなかったほか、極彩色のみというような色使い、ただ大きいだけではなく、道路に大きくせり出して、他の看板にかぶらないようにするなど、レッセフェール(自由放任主義)の香港を象徴するものだった。その結果、香港の100万ドルの夜景を構成する重要な役割も果たした。
電飾は1990年代ぐらいまでが一番多かったといわれているが、老朽化で時折看板が脱落する事故が発生し始めた。2010年に法律が改正され看板の設置基準が厳格化されたため、多くの看板が姿を消しており、今では一部しか残っていない。
今回は、実際に撤去されてしまったものの、幸いにも保存されていた看板が展示されるほか、このイベントのために製作された新作など合わせて20以上ネオンサインを展示。職人の足跡をたどりながら、技術にも焦点を当てるほか、デサインに凝らした工夫なども紹介する。
7月11日~8月27日の日曜・火曜にはワークショップも開催。参加費は180香港ドルで、14時(広東語)と16時(英語)に始まる。
会場は、大館の01座複式展室(Block 01 Duplex Studio)と洗衣場石階(Laundry Steps)。開催時間は8時~23時。入場無料。9月3日まで。