香港の中堅デベロッパー南豊集団(Nan Fung Group)が旧啓徳空港(Kai Tak Airport)の北東部で建設を進めてきた商業施設とオフィスの複合施設「AIR SIDE」が9月28日、ソフトオープンした。開発が一気に進む旧啓徳空港跡地を象徴する建物の一つとなる。
MTR啓徳駅に隣接する「AIR SIDE」は、高さ200メートル、面積は190万平方フィートで、47フロアで構成する。オフィス部分は32フロア分、120平方フィート、ショッピングモールは70万平方フィート。駐輪スペースは48台、駐車スペースは850台分を確保し、全てに電気自動車用の充電設備を設置した。
モールは啓徳空港をインスパイアし、「想飛(Desire to Fly)」をテーマに据えた。2階には「Idea Cloud」、3階には「GATE 33」と呼ぶ展覧館があり、キャセイパシフィック航空などの協力を得て、航空日誌、飛行地図、当時の航空券、写真などの貴重な資料を展示する。1971年に「銭氏兄弟」がイギリスを出発し14カ国を経由して30日かけて香港に到着したが、その時に使われたプロペラ機「Beagle Pup 100」の実物も展示する。
モール内には日系企業も多く入る。飲食では、自由が丘に本社を構え、抹茶と日本茶のカフェ「nana's green tea(ナナズグリーンティー)」が香港初出店する。「魚がし日本一」も初出店するほか、「牛カツ京都勝牛」「8番ラーメン」も出店する。
香港のケータリング企業「Relish Kitchen」は木を使った家具を製造する「A LOT」とコラボして、創作日本料理店「Relish Kitchen by ALOT」を出店するほか、カレーと卵料理に力を入れ、現在ifc mallとK11に店を構える「米炊(Kometaki Taste)」の3号店も開店を予定する。
さらに、「千両」「焼肉火蔵(Kagura)」「鮨点」なども出店。これらは香港企業などが経営している日本料理店で、日本食のすそ野が広がっている。ほかの日系関係では、香港で積極的にビジネスを行っている「MUJI」が1万1200平方フィートの店を構えるほか、高級スーパー「city’super」は店舗面積2万5000平方フィートの大型店を出店予定。
ペットショップ「All Japan Pet」も初出店。ペット用品の販売や浴衣などの和服も販売することで、日本を前面に打ち出した商品を展開する。同モールでは、香港でペットオーナーが増えていることからペットフレンドリーを打ち出しており、ペット関係の店が多く出店する。ほかに、セルフサービスのペットケアやリハビリ施設、ペット交流スペースを備えた空港をテーマにしたペットショップ「Ruff & Fetch」、高級猫用おやつやおもちゃ、しつけサービスなどを取りそろえた猫専用エンターテインメントスペース「Purr'Licious」などもある。
その他、「Nespresso」がイギリス、ドイツに続きアジアで初めてコンセプトショップを開くほか、ドイツの高級家電「Miele」も体験施設を伴った店を開くなど、外資系も香港市場開拓に力を入れる。
大手シネコンの一つ、MCLは大きさ3万3000平方フィートのシネコンを建設。900席、7スクリーンで、そのうち1館のスクリーンは横19メートル、高さ9メートルで、「リアルさを追求した」というRealD Ultimate Screenを採用する。
啓徳駅を挟んだ反対側では、地場小売り大手の利福国際集団(Lifestyle International Holdings)が運営しているSOGOが入る複合施設「双子匯(The Twins)」の建設も進められているほか、近くには香港スタジアムに変わる大型スポーツスタジアムも建設中。周辺開発が終わるころには九龍北東部の中心地になっていくと見られる。