香港政府は赤色のミニバスから緑色のミニバスへの転換を促す計画を決定し、変更手続きを10月31日まで受け付けると発表した。
香港では公共小巴(Public light buses)と呼ばれるミニバスは天井部分が赤色のミニバスと緑色のミニバスに分類されている。ミニバスは1950~1960年代、9人乗りのバスとして運行が始まったが、当時は法的な整備があまり進んでいなかったため、「白タク」ならぬ「白ミニバス」としてサービスが提供されていた。1967年に発生した「六七暴動」は、トラムや通常のバスへの放火のほか、運転手などへの危害もあり公共交通機関として最低限のサービスの提供すら難しい状況になった。そこで当時の香港政庁は一種の違法ながら、「白ミニバス」を活用することで公共交通の維持を図る現実路線を取った。
1970年代に入り合法化する政策に踏み切った。その後、定員を16人から19人にするなど細かな修正を行いながら現在に至る。基本的には通常の路線バスが走らない入り組んだ場所を走ったり、深夜に営業したりしている。
ミニバスの数は、法律により最大4350台と定められている。その中で緑色のバスは、2023年12月現在3317台が登録されている。香港政府が定めたルールの下、運行ルートと運行頻度、停留所、運賃が決まっている。香港島69,九龍82,新界(New Territories)210の合計359路線、1日131万人の輸送能力がある。
一方、赤色のミニバスは緑色より緩やかで、駐停車禁止エリア以外ではどこでも下車することが可能。運賃も基本的に自由に設定できる。同じ2023年12月現在792台が登録され、1日15万8000人が利用している。赤色のミニバスのライセンスを取得は香港のタクシーライセンスと同じで、一種の投資対象であり、一時期はかなり高額だったが、コロナ禍で在宅勤務が増えたほか、外出して食事をする人が減ったこと、地下鉄の新路線開業の影響を受けるなどで乗降客が減少した。現在は総ライセンス数は上限に達していないためライセンス価格が下落し、逆ザヤに陥っているオーナーも少なくない。
香港政府は、香港仔(Aberdeen)の東勝道(Tung Sing Road)と旺角(Mong Kok)の洗衣街(Sai Yee Street)を往復する路線など計11の赤色のミニバス路線について、緑色に転換するよう呼びかけている。
政府が始めたきっかけは、サービスにバラつきがある赤色から政府管理下にある緑色にすることで「質の高い」サービスを提供しようとする狙いがある。逆ザヤの事例が増え、これ以上赤色のミニバスが減少することで公共交通が維持できなくなるのも避けたいところ。香港政府は、高齢者を対象に公共交通機関についての料金優遇措置を取っているが、2022年2月より赤色のミニバスも条件を満たせば対象に加えることにした。現在、70台が適用されているが、それには緑色のミニバスのように運賃、路線などの各種情報を提出する必要がある。提出書類が事実上同じであれば、赤から緑への転換を促して、より多くの高齢者に利用してもらいたいという狙いもある。
赤色から緑色に変更するには、赤色のミニバスとして4月30日現在で5年以上の運行実績があること、1台の車両が毎日フルタイムで運行していることなどが求められる。締め切りは10月31日。どれくらいの台数の赤色のミニバスが緑色に転換するのか注目を集めている。