10年に一度の村の伝統行事「錦田郷酬恩建醮」が12月13日、香港・元朗の水頭村で始まった。1週間にわたり開催されている。錦田郷事委員会によると、この祭礼は1685年に始まり、今回で34回を迎えると語り継がれ、香港で最も歴史の古い太平清醮の一つとされる。「太平清醮」とは、香港や広東エリアで行われる伝統的な道教儀式のことで、村や地域の安寧・疫病退散・五穀豊穣を祈るために行われる祭を指す。
沙田でも同日、同じく10年に一度の「沙田九約太平清醮」が始まり、沙田・牛皮沙街遊楽場で5日間にわたり開催されている。こちらも竹組の祭場を中心に道教儀式や●劇上演が行われ、地域の安寧を祈る。今年は大埔宏福苑火災を受け、会場には犠牲者を悼む龍牌も設置された。
この祭礼の最大の見どころは、会場の周王二公書院前に設けられた巨大な竹組の特設祭場。内部は竹を使いながらも吹き抜けの空洞構造になっており、約3万本の竹を使ったという建物は5階相当の高さを誇る。伝統的な竹建築技術によって組み上げられた祭場は、香港の無形文化遺産の象徴でもある。今回は特に先日のマンション火災を受けて、市民の関心は、「将来竹棚を金属製の棚に置き換えられてしまうのではないか」という点にもあり、今のうちにしっかりと香港の伝統である竹の櫓(やぐら)も楽しみたいと村以外の香港人達も多く訪れている。
内部では太平清醮(打醮)を開催する際に、村や地域の委員会と請負業者・参加者との間で交わされる正式な契約書で、祭礼の準備や運営に関する取り決めを記録した1925年の文書「打醮合約」など貴重な文物が展示し、地域の歴史と共同体の結束を伝えている。
ほかにも、「地獄絵図」を再現した紙紮人形の展示館(十王殿)を設ける。竹組の醮棚内に「地獄殿」を作り、十王図や地獄の場面を紙紮(しざつ)人形で表現する伝統がある。加えて、観光客なども村の伝統を知ることができるように、同催事のハイライトのアイテムやプログラムを紹介したり、村の生活の写真などを展示したりしているコーナーもある。
祭りでは経文の唱誦や楽器演奏を組み合わせて儀式の荘厳さを高める道教の科儀音楽や太鼓や銅鑼(どら)の音に合わせて舞い踊るライオンダンス(舞獅)も披露。村人が一堂に会して食事を共にすることで、共同体の結束と繁栄を祈る意味を持つ食事の様子も見られるが、このエリアには仕切りができ、村民以外は入ることが制限される。しかし、卓数は数百から数千に及ぶこともある丸テーブルが竹組の建物の中や屋外に並べられ、十数種類の食材をごった煮のように盛り付ける料理を用意する「盆菜宴」を楽しむ様子が見られる。
神々にささげる広東オペラ「●劇神功戲」など多彩な催しを行う。時折列をなす儀式では、道教儀式の音楽でも重要な役割を果たす楽器である●吶(スオナー)の音が空に鳴り響き、道端には黒や灰色のフォーマルな形の長袖のチャイナ服(長衫)で参列する様子も見られた。
来場者は長衫の無料体験を楽しんだり、竹組の壁に取り付けられた巨大な装飾看板(花牌)の展示を楽しんだりすることができる。
開催時間は11時~19時。入場無料。今月19日まで。
●=奥かんむりに号、●=口へんに小に貝