米グーグルは3月16日、人工知能(AI)モデル「Gemini」のサービスを香港で解禁した。これにより、香港のAIの利用環境が大きく改善することになる。
2023年末にOpenAIがChatGPTを世界に向けて開放すると、その影響は瞬時に広がり、世界的な利用拡大を引き起こした。生成AIに後れを取ったグーグルはユーチューブ、Gmail、Googleマップなど数億人規模のユーザーを抱える自社サービスから得られる膨大なデータを活用するなどしてGeminiの精度を向上させ、性能面でChatGPTと双璧を成すようになった。
香港においてはこれまで、ChatGPTもGeminiも解禁されていなかった。香港はマイクロソフトのCopilot、Perplexity AI、DeepSeek、Grokが利用可能で、これらを代替利用していた。ChatGPTとGeminiを使う場合は、VPN環境が不可欠だった。今後はVPN契約が不要なることから経済的な負担も軽減されることになる。
香港では、「Poe」というAIチャットボットのプラットフォームがあったのが救いだった。これは、アメリカの知恵袋サイトQuoraが提供しているサービスの一つで、Poe内にはGemini、ChatGPTのほか複数のAIが使えるようにUIが設計されている。そのため、香港ではPoeを経由して利用する人が多かった。ただし、無料での利用回数に上限があるなどの制限があった。
中国本土では、YahooもFacebook、Instagramも使えないが、香港では一国二制度が機能しており利用可能である。しかし、GeminiやChatGPTに関しては、香港でサービスが制限された理由としては、2020年の香港国家安全維持法やアメリカ政府のハイテク輸出規制など、政治・ビジネス環境を見極める必要があった可能性が考えられる。
グーグルとしては、Geminiを一般に提供するにしても、生成する回答が香港の法律に抵触しないように微調整する必要があったものとみられている。その試金石となったのは、Geminiの法人・教育機関向けサービスの提供。法人に向けては、2024年5月からGoogle Workspace内にあったGeminiを利用できるようになっていた。有料版だが、ここから得られる香港に関するデータの取得は大きく、一般公開版の開発に役立った。
香港政府としてグーグルは微妙な存在で、便利なサービスを提供する一方、香港政府が望まない政治的な情報を提供するとも捉えられている。一方、香港政府は、先日の財政予算案の発表でもAIに大きな予算は配分をした通り、香港をAIのハブの街にしたいと考えている。金融、物流、法律の世界ではAIの活用なしでは既にビジネスが成り立たなくなっており、AIの導入が遅れると香港の都市機能の優位性が弱まり、シンガポールなどの競合都市に企業が移転されるリスクが出てきた。これらの要素が絡み合い、香港でのGeminiのサービス提供が実現した。
現在はブラウザーのみの提供となっている。いずれスマートフォンのアンドロイド、iOS版の提供へと段階的に拡大していく。今後はChatGPTが香港市場に進出するのかどうかも注目が集まっている。