コングロマリット「怡和控股(Jardine Matheson Holdings)」の子会社で、マンダリン・オリエンタルなどを運営する「文華東方国際(Mandarin Oriental International)」は銅鑼湾(Causeway Bay)にある4つ星ホテル「怡東酒店(The Excelsior)」(281 Gloucester Road, Causeway Bay, Hong Kong TEL 2894 8888)の営業を2019年3月31日に営業を停止すると発表した。跡地にはオフィスビルが建てられることが決定している。
エクセルシオールは1973年開業で45年の歴史を持つ。34フロア、客室数は869。この土地はジャーディンが1841年に現ホテルのほか、その北側にあるヨットクラブ、東側のビクトリアパークまでの土地を購入し倉庫を建設したのが始まり。その後は、ジャーディンがいろいろな使用用途に応じてさまざまな開発を行ってきた。同ホテルから通りを挟んだヌーンデイ・ガンはジャーディンの所有船が入港する時に職員が大砲を鳴らしていた名残だ。1989年から香港公益会(The Community Chest)に3万3000香港ドル以上をチャリティーで寄付し、かつ宣伝目的でなければ個人的にこの大砲を撃つことができるようになった。
最上階にあるバー「ToTT's and Roof Terrace」は九龍(Kowloon)側のみならず、中環(Central)などの香港島西側の夜景も楽しめ、かつライブンバンドがあることから、香港市民のデートスポットにもなっていたほか、地下にあるスポーツバーの「Dickens Bar」はソファがあるなどラグジュアリーな面もあり香港随一の人気スポーツバーとして有名だった。先頃、ブリティッシュ・エアウェイズが香港撤退を決定したがパイロットやキャビンアテンダントの宿泊ホテルとしても知られていたほか、無線電視(TVB)のトップで、香港映画界に多大な貢献をした故邵逸夫(Run Run Shaw)のお気に入りのホテルでもあったことでも知られている。
同ホテルは一等地にあるが老朽化によりメンテナンスが常時必要などで運営コストがかさんでいたほか、世界的な宿泊客の傾向としてマンダリンのような「超」が付く高級ホテルか必要最低限の設備さえ良ければ十分という安いホテルに泊まる客が増えたことにより、どちらつかずの同ホテルは集客が難しく、厳しい経営環境に置かれていた。
文華東方国際は当初、ホテルをオフィスとして売却することを考えていたが、銅鑼湾はAグレードのオフィス需要が高く、空き室率が長らく2%前後を推移し中環、湾仔(Wan Chai)と並ぶ低い空き室率のため、自社によるオフィスビルの建設を決断した。規模は26フロア、建築面積6万3500平方メートル、総工費6億5000万米ドル。2025年の完成を目指す。現在の市場価値は270億3000万香港ドル、1平方フィートあたり4万香港ドルだが、オフィスビル完成後は410億香港ドル、1平方フィートあたり6万香港ドルに価値が上がると期待されている。実際の物件の賃料はオフィススペースが1平方フィートあたり85香港ドル、小売りスペースが200香港ドル程度になると予想されている。