銅鑼湾のビクトリアパーク近くにある香港中央図書館の地下展覧館1で3月2日、巡回展「手仕事のかたち-伝統と手わざ-」が始まった。主催は在香港日本国総領事館と国際交流基金。日本の日々の暮らしの中で育まれてきた工芸品を約100点取り上げ、陶芸・染織・金工品・漆工品・木竹工品・ガラス・紙・文具などの分野で、日本各地の工房で伝統的な素材や技術を受け継ぎ、創造性豊かな作品を制作している工芸作家の作品を展示する。日本の工芸品は実用的でありながらも美を兼ね備えているのが特徴で、明治以降の近代化によって大量生産が主流となる中でも、残り続けた「手仕事」は独自の発展を遂げてきた。
会場では、陶器だけでも、茨城の笠間焼、岐阜の美濃焼、京都の京焼・清水焼、岡山の備前焼、山口の萩焼、佐賀の伊万里焼・有田焼など、さまざまな種類があることを一つの場所で感じ取ることができるようにした。和紙にさまざまな装飾を施して作られ、ふすまや障子、びょうぶなどに使われる工芸品「江戸からかみ」を使った照明をはじめ、箱根の寄せ木細工、高岡漆器、輪島塗、南部鉄器や江戸切り子など、日本各地の伝統工芸品が並ぶ。
オープニングセレモニーでは、福岡県八女(やめ)市の馬場美雅さんが三味線演奏で会場を温めた。お茶の産地としても知られる八女は約200年の伝統を誇る八女ちょうちんがある。和紙の産地としても知られ、竹林もたくさんあるなど、もともと原料に恵まれていたこともあるエリア。八女ちょうちんは家紋を入れるものだけでなく、花や日本らしい風景の絵を描くものもある。
会場には伝統的なオリジナルである工芸品に加え、デザイン性を兼ね備えた手仕事も併せて展示。茶釜を展示する栃木県佐野を拠点に活動する鋳物師の江田蕙さんの作品も並ぶ。鉄鉱石を使った鉄器はいろいろ出回っているが、寿命が数年~30年くらいであるのに比べ、純粋な鉄で作った和銑(わづく)釜は200~300年の耐久性があるため、古い釜が現役で使われている。原料は日本刀を作るときと同じ、たたら製鉄を使うが、5個~6個を並行して作り、釜の部分を作るのに3カ月ほど、ふたを作るのに数週間かけて完成する。この手法で作られた茶釜で入れたお茶には、茶釜の鉄分で一段とまろやかな味わいを楽しむことができるという。
もともと反物を染めるのに使っている藍を皮に染めた伝統の●(すくも)による藍染文化藍染め術も紹介している。藍染め師の浅井直幸さんは「藍染文化藍染めすために皮を染めることを考えたが、布は針を使って模様が作れることと比べて、皮は使えなかったり、浸透させにくかったりする」と試行錯誤しながらも、本物の藍の継承のために作品を生み出す。色が付いてしまうと思われている藍も本物の藍であれば使う期間の長さで味わいが出て、素材としても殺菌作用もあり、本来肌に優しいものだという。江田さんと浅井さんの作品はPMQでも展示販売している。
期間中、工芸師によるレクチャーやワークショップも行う。開館時間は9時~20時。入館無料。今月14日まで。
●=草かんむりに染