香港政府は新型コロナウイルスによる肺炎の対策について連日さまざまな対策を行っているが、2月8日から中国本土から香港に入境する香港市民を含む全ての人を14日間、強制隔離し、検疫を実施することを明らかにした。民間の経済活動への悪影響が広がってきたほか、マスク不足にも陥るなど、厳しい社会環境になっている。
2月7日現在、香港での感染者が24人、死亡者は1人となっている。林鄭月娥(Carrie Lam)行政長官は、ほぼ連日新型肺炎について記者会見を実施し、新たな対策を発表している。2月4日午前零時から、税関のうち羅湖(Lo Wu)、落馬洲(Lok Ma Chau)、皇崗(Huanggang)、港澳碼頭(Hong Kong-Macau Ferry Terminal)の4カ所、2月8日より、啓德郵輪碼頭(Kai Tak Cruise Terminal)の出入境ポイントを封鎖することを決め、香港国際空港,深セン湾(Shanzhen Bay),港珠澳大橋(HZMB)の3カ所のみ税関を開放する。
これにより物流に支障をきたし物資不足が懸念されるが、香港政府は米などの在庫も十分あると説明。物流に関しては影響を受けないことや、物流業務のために香港と中国を往来する運転手などの強制隔離を免除する一方、必要な衛生対策を施すと表明した。
2月8日から中国本土から香港に入境する香港市民を含む全ての人を14日間、強制隔離を行い、検疫を実施するだけではなく、特に湖北省を訪問し、香港に戻ってきた香港居民については、リストバンド状の電子追跡機器を着用し、自宅隔離による検疫措置を行うことになった。
検疫所については、「麦理浩夫人度假村(Lady MacLeHose Holiday Village)」と「鯉魚門公園及度假村(Lei Yue Mun Park and Holiday Village)」の計60のベッドは満床で、「保良局賽馬会北潭涌度假営(The Po Leung Kuk Jockey Club Pak Tam Chung Holiday Camp)」が新たに検疫所として使われる予定になっている。
医療関係者が加入する労働組合「医管員工陣線(Hospital Authority Employees Alliance)」は2月3日~7日、香港政府に対して中国本土との境界を全面封鎖することを求めるストライキを実施。日ごとに参加者数は異なるが数千人規模でストライキが行われている。
民間では、2月13日に始まる恒例「第48回香港藝術節(香港アートフェスティバル)」は一部のプログラムについてキャンセルが決定し、払い戻しが行われる。日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は多くの中国路線を減便や運休、機体の小型化を実施。特にANAは関西国際空港と香港を結ぶNH873 便とNH874便について2月17日から3月28日まで運休する。香港航空は、米子、岡山、鹿児島を含む日本への地方路線を2月11日から段階的に取りやめ、3月28日までは運航を停止する。香港エクスプレス航空は、香港~下地島線は2月7日と2月12日以降運休し、長崎、石垣、関西の便についても減便を決めた。国泰航空(Cathay Pacific Airways)は、中国便の90%、世界で30%分の減便を実施するほか、約2万7000人の従業員全員に対し最長で3週間の無給休暇取得の「お願い」をしている模様だ。アメリカのユナイテッド航空では香港便全てを2月20日まで、アメリカン航空はロサンゼルスとダラス発着の香港便を20日まで停止する。イタリア政府も香港・マカオを含む中国全土との航空便の運航を停止した。
国・地域で見ると、フィリピンは香港・マカオを含む中国全土からのフィリピン国民以外の旅行者の入国を禁止したほか、台湾政府は2月7日より香港・マカオからの訪問者には14日間ホテルまたは自宅での自主検疫を求めると発表。一方、マカオでは2月5日より、市内全てカジノ、映画館、劇場、バーなどの営業を15日間停止することを決定した。政府業務は、しばらくの間、緊急用務に限定するとし、こちらもマカオ市民に外出を控えるよう求めた。
キャリー・ラム行政長官は、香港政府はとしてウイルス対策のため100億香港ドルの基金を設立、テナントの大家は肺炎の影響を受けているテナントに対して支援または配慮するように求めた。さらに企業に対しては従業員のニーズを考慮することも訴えている。また、外出はできる限り控え、家に滞在し、外出時にはマスクを着用するよう呼び掛けている。さらには、中国本土に旅行しないようにしてほしいと強く勧める。渡航履歴や接触の履歴に虚偽があった場合は罰則を与えるとした。