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新創建、2つのバス会社「城巴」と「新巴」を32億香港ドルで売却へ

香港内の多くのバス路線をもつ「城巴」と「新巴」

香港内の多くのバス路線をもつ「城巴」と「新巴」

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 香港最大手のデベロッパーの一つ「新世界発展(New World Development)」の傘下企業である「新創建集団(NWS Holdings)」は8月21日、香港島を中心にバス路線を運行する城巴(City Bus)と新世界第一巴士服務(New World First Bus Services)を32億香港ドルでBravo Transport Holdingsに売却すると明らかにした。

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今回は新創建交通服務の株式100%をBravo Transport Holdings社に売却するが、同社はTemplewater Bravo Holdings(TBHL)が90.8%、漢思能源が8.6%、Ascendal Groupが0.6%の権益を持つ合弁企業だ。

 この2つバス会社を合わせた従業員数は5000人で、約200路線を1700台のバスで運行し、1日100万人が利用している。ただ、この2社を運営する「新創建交通服務(NWS Service Management)」の2019年6月期の決算は前年比で94.53%減の890万香港ドルと大きく落ち込んでいた。逃亡犯条例改正によるデモ、新型コロナウイルスの感染拡大により経営環境は厳しい状況に陥っていた。新創建集団は売却後も経営形態は変更せず、職員の給与、待遇、福利厚生などの変更もないとした。

 Bravo Transport Holdings の大株主であるTBHLは、ファンド「善水資本」の傘下企業である「Templewater」が管理運営している。その善水資本はイギリスのInvestec Bankと張●さんによって設立された。8.6%を占める漢思能源は華南地区で石油、液体および気体の化学品、倉庫、物流を手掛ける企業。Ascendal Groupはイギリスに本拠を置く会社で、公共交通サービス、不動産、金融などを行う複合企業。

 2つのバス会社の歴史を見ると、新世界発展は1998年3月10日に新巴を設立してバス業界に進出を果たした。香港島で88路線を走らせていた中華バスが労使紛争によるサービスの低下などを理由に香港政府によって競売に掛けられることになり、新巴創設からわずか21日後の3月31日に中華バスを落札した。新巴のライバル会社であった城巴は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響を受け、イギリスの親会社が新世界に売却。その結果、新世界が香港島を中心としたバス運行を一手に引き受けていた。

 新巴、城巴の車両には、香港の宝飾の最大手である周大福(Chow Tai Fook)の広告よくあるが、これには理由がある。非上場の会社「周大福(控股)(Chow Tai Fook (Holdings))」は傘下には「周大福珠寶集団(Chow Tai Fook Jewelly Group)」と「周大福企業(Chow Tai Fook Enterprises)の2つがある。後者は新世界発展の43.41%を保有。その新世界発展は傘下に、今回登場する新創建集団のほか、新世界中国地産、新世界百貨中国という3つの企業を持つコングロマリット。周大福、新世界発展、新創建集団のいずれも鄭一家が経営しているが、こうした関係から、もしバス車両に広告がない場合は周大福の広告を載せているためである。

 今回の売却劇は、いろいろな企業が複雑に絡んでいるのが特徴で、資本、株を利用してある種のマネーゲームを行う金融都市香港らしいニュースともいえる。

●=方2つのかんむりに土

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