香港の街を縦横無尽に走るミニバスのプレートをオリジナルでキーホルダーやプレートにして販売する巧佳小巴用品(G/F., 39 Battery Street, Jordan, Kowloon Tel: 9017 9587)が5月初旬、「小巴文化資料館」をオープンした。
ミニバスプレート文化を残したいと資料館をオープンした麦錦生さん
佐敦駅からほど近くにある炮台街にある同店の経営者、麦錦生さんは元々、店に掲げる看板などの広告制作会社だったが、1978年、会社の目の前にミニバスの停留所があり、運転手に頼まれて手伝ったことがきっかけでミニバスのプレートを書き始めたという。
香港には赤と緑の2種類のミニバスが走っているが、ミニバスのフロントガラスの前には白字の手書きで行き先が掲げられていることが多い。これを作っているのが巧佳小巴用品で、2016年から、この技術を生かして小さなキーホルダーを販売。「だんだんとミニバスの台数が減っていく中で、他の方法でこの文化を守りたかった」と麦さんは話す。キーホルダーは1個35香港ドル、プレートはサイズによって100香港ドル、150香港ドル。カスタムメードで文字を書いてもらう場合は、キーホルダー=90香港ドル、プレート=200香港ドル。
グランドフロアのスペースを資料館とし、麦さんや商売仲間が集めた、黄ばんだ新聞の切り抜きや古い写真、ミニバスの備品などを並べる。トヨタのLPG車の赤バンのフロント部分を置き、運転席の装備もほぼ全て復元した。来店客がミニバスの運転手になって、ミニバス文化を体験できるようにしたという。60年代から徐々に増えだしたバンが1969年に整理されてミニバスが生まれ、その後、日産、フォード、三菱などの車種も取り入れながら、現在のトヨタ製に落ち着いた変遷も分かる。
普段は比較することのない香港島と九龍のプレートの違いの大きさは、香港島は政府の指定ルールを守っていたものの、九龍側の運転手は少しでも大きく目立つようにしようとしたからだという。赤バスと切っても切れない香港マフィアの世界についても、プレートの色などが見極めるポイントだったりと、多くの小話も聞かせてくれる。
麦さんは10年以上前からミュージアムの開設を考えていた。記者から「ミニバス文化を継承するつもりはないのか」と聞かれたことがきっかけで、やっと願いがかなって店を拡張することができたという。赤いミニバスはいつまで香港の街を走ることができるか分からない状況の中、「車が消えてしまう前に、私たちなりの方法で文化を残していきたい」と麦さんは意気込む。
開館時間は10時30分~18時。入館は基本的に15人以上で、事前の申し込みが必要。