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香港・中環に懐石料理「ながもと」 旬の食材生かし月替わりのコースメニュー提供

中環で「ながもと」として再スタートをきり、調理の様子もしっかりみてもらえるような設計に

中環で「ながもと」として再スタートをきり、調理の様子もしっかりみてもらえるような設計に

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 中環のオフィス街からほど近く安蘭街に2月、懐石料理「ながもと」(8/F, 18 On Lan Street,Central Tel:2520 5218)がオープンした。

卯月の献立で提供する「八寸」

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 同店を率いる料理長の長本輝彦さんは京都生まれ。辻調理師専門学校を経て、さまざまな店で腕を磨き、京懐石の店など、大阪や京都を含め30年以上の経験を積み、その後、香港のミシュラン星店「柏屋」で働いてきた。「柏屋香港」は今年6月に閉店したが、同じ場所で運営を変えて自身の名を冠した「ながもと」で再スタートを切ることになった。

 店内に配置したL字型カウンターの席は、包丁さばきを目の当たりにしながら会話ができる割烹(かっぽう)風の12席。照明をやや落とし、「調理場にスポットライトが当たるような演出で、舞台を楽しむように料理のパフォーマンスも見てほしい」という思いから、改装したという。ほかに、10席程度の個室も用意した。

 日本料理の根底ある「旬」の哲学を香港でも際立たせ、旬の食材を使った懐石を提供することで、日本ならではの季節感、季節の移り変わりを体験できることに主眼を置く。食事環境の選択、料理、食材のプレゼンテーションに至るまで、「四季の変化に加えて島の地理的特性を反映している」と言い、懐石コース(2,380香港ドル)に仕上げた。10品から成るコースメニューは月ごとに内容を変える。

 例えば、4月の「卯月」コースには、3月の「弥生」と同様に春を感じてもらう内容に仕上げ、「日本に行けなくても桜で花見気分を味わってもらおう」と考えたメニューだという。「先付」は、3月はうどと菜の花にホタテの貝柱、そこにフキノトウのペーストで仕上げていたが、今月はホタテの貝柱とウニ、アスパラに桜の花や桜の葉を添える。続く「替」には、春菊としらすのゴマあえに、スダチも搾って香りも楽しんでもらうようにする。

 「いろいろと体験してもらえる場にしよう」と、例えば昆布とカツオで取る「だし」を試飲してもらうステップも用意。まずは水出しの昆布だしを一口含んでもらい、次に削り節を入れたもので味の違いを感じてもらう。うまみが6倍くらいにもなると言われるだしを、その後「煮物わん」として一つのメニューで食べると、「具材と相まってさらに味が変化していく」という。「香港の人はより味の繊細な部分を感じ取れる人も多い」と長本さん。「知りたい」という気持ちも強く、いろいろな質問も飛び交うという。

 「桜」をテーマにしているだけに、煮物に「桜エビの飛龍頭」、造りには「桜鯛」、八寸には「鰆木(サワラ)の芽焼き」を入れたり、揚げ物には「桜鱒(ます)の白扇揚げ」、ご飯にも「桜鯛(だい)とタケノコのご飯」にはフキ、刻みミョウガ、叩き木の芽で香りと色を散らす。米は山形産の「はえぬき」を使うが、「粒がしっかりとしていて香港人好み」だからだと言う。

 「当たり前のことを当たり前にする」が長本さんが料理に向き合う姿勢で、「香港に来てから柔軟になった」と自身を振り返るものの、店内に生ける草花も毎週自ら出かけて選ぶなど、毎日、「当たり前の仕事」をして客をもてなす。「日本料理が大好きな人が多い香港で、私のチームが作り上げたディテールの美しさを感じてもらえれば」とも。

 営業時間は通常は18時45分スタート(土曜・祝日は12時45分~、18時45分~の2回)日曜定休。現在は新型コロナ肺炎措置に準じて、12時45分~の1回を営業。

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