コロナ規制もなくなり、学校給食もスタートした香港で2月、日本米給食の提供が始まった。
香港の子どもたちの昼食は、弁当を持参したり、学食を利用したり、学外に買いに行ったりするなど、さまざまな選択肢がある。一般的に事前にオーダーする給食の場合、好みや宗教上の制限がある児童・生徒もいるため、概ね3、4種類から事前に選択できるように設定されている。日本のように、おかずごとに皿に盛り付けるタイプではなく、弁当のような形態が一般的。
月ごとの提案があるメニューは、中華やパスタなどを基本メニューとして設定するが、日本のカレーライスは人気メニューで、ある大手給食センターでは、カレーがある日は8割ほどが選ぶという。2020年に四洲集団とタッグを組み日本米を使った炊飯工場を設立した全農香港は、新たに給食への日本米の導入を図った。通常より弁当のコストも上がることから、まずは2カ月間、試験的導入が決まった。現在は少し割高な日本米を選択した生徒が給食として食べられるようにし、1日当たり5000食、約30校、約2カ月で20トンが消費される。
日本の米の年間需要量は毎年約10万トンずつ減少している。。国内マーケットが縮小傾向にあるなか、新たな海外需要開拓を図っていくことは日本の課題。海外の日本食レストランの店舗数は増加傾向にあり、香港には1500店舗の日本食店があるともいわれる。最近は日系中食・レストランチェーン、おにぎり店などの需要開拓を進めた結果、米の輸出量は大きく増えた。 2022年の日本米輸出総数量は前年比27%増の2万8928トンだが、そのうち約35%の9880トンを香港市場が占め、今年は1万トンを超える見込み。
併せて日本米への理解を深めてもらうため、2月28日、日本語の履修を必修科目とする順德聯誼總會翁祐中學では新潟県内の農協の協力で出前授業も実施。倉庫全体で2万トン収容できる新潟米広域集出荷施設から、新潟県の風土・気候の特徴、米が育つまでの様子などを説明した。クイズなども織り交ぜた座学を前半に、後半は日本産鶏卵を使ったゆで卵などの具材でおむすびづくりに挑戦してもらった。三角に握るのはなかなか難しいようだったが、ハート型や星形を自分たちで作る個性的な生徒もおり、その場で試食して興奮する姿が見られた。
全農香港の金築道弘所長は「香港へ輸出する日本米は毎年輸出が増えているが、多くは日系回転寿司や牛丼、さらには、おにぎり店などの店舗需要。家庭食での日本米の普及はまだまだ発展途上にある。日本米が海外の学校給食に採用されるのは世界で初めての事であり、まさに「食育」として、子どものうちから日本米に触れることで、農業のない香港にとって日本米がソウルフード、将来の日常食として選択してもらうための需要に繋がってほしい」と期待を込める。