香港最大手のデベロッパーの一つ「恒基兆業地産」(Henderson Land)が中環(Central)に建設中の高層オフィスビル「The Henderson」(2 Murray Road, Central, Hong Kong)の建物が完成し、全貌が明らかになった。中環のビル群の中に曲線が目立つ新しいビルが誕生し、2023年内のオープンを目指している。
設計はロンドンに拠点を構えるザハ・ハディド・アーキテクツで、東京五輪の新国立競技場でも特徴的なデザインを提案して話題を集めたが、このビルも完成すれば香港を象徴する新しい高層ビルになる。
建設場所は元々、立体駐車場があったところで、西側には遮打花園(Chater Garden)、東側には力寶中心(Lippo Centre)、南側は中銀大廈がある。北側には香港最大のデベロッパー、長江実業集団(CK Asset Holdings)の関連企業が名付けた41フロアの高層ビル「長江集團中心二期(Cheung Kong Center II)」(2023年完成予定)を建設中で、この2つの高層オフィスビルが完成すれば、周辺は香港ビジネスの中心地として、さらに機能強化されることになる。
ザハ・ハディド・アーキテクツは、不幸にも白紙撤回に追い込まれたが新国立競技場の最初のコンペに勝っているほか、マカオのIRリゾート「Morpheus hotel」のデザインも手がけるなど世界屈指の建築設計事務所として知られる。このビルは、丸みを帯びた特徴的なビルになっており、一目で見分けられるデザインとした。
ビルの高さは190メートル、地下5フロア、地上36フロアで、延べ床面積は46万5,000フィート。地下には265台分の駐車スペースがあり、電気自動車(BEV)の充電施設も完備すほか、オートバイ78台も駐車できる。3階はロビーやカフェ、5階はレストラン街になる予定。6~25階はオフィスフロアとし、22階は「Sky Garden」と呼ばれる小さな公園を設ける。26~38階もオフィスで、最上階の39階は宴会場として使う。36フロアでも39階まであるのは、4階をあえて設けないなど、縁起を担ぐため。
最上階の宴会場は天井部分をガラス張りにした。通常、ビルの屋上はヘリポートなどがあるため、一般的な天井になるのが普通だが、同ビルは夜景や空を楽しんでもらうためガラス張りにした。各フロアの高さは3.5メートルとし、圧迫感を減らす配慮も施す。
サステナブルなビルであることも目指し、エネルギー消費量は従来と比べて26%、水の消費量もこれまでより50%削減するという。コロナ禍の経験から、有害な粒子を受け止める空調設備を設置したほか、湿度管理も行い、「快適なオフィス空間を創出する。ビルの75%を建築廃棄物を再利用して建設した。
入居するテナントとしては、オークションで知られる「クリスティーズ」が5万平方フィートの広さを契約したほか、アメリカの投資ファンド「カーライル」が2万平方フィートの分のオフィスを借りることが決まっている。一方、カナダの不動産関連企業「Colliers International」によると香港不動産市場については、グレードAの4月の空室率は15%に達している。これは2019年の3倍強の数字で、The Hendersonのテナント契約も全体の3割しか埋まっていない状況がある。「The Henderson」「長江集團中心二期」の完成後は、オフィス物件がさらに供給過剰となる可能性も高いため、世界トップクラスの価格を誇る香港のオフィス市場に変化が訪れる可能性もある。