香港城市大学(City University of Hong Kong)で7月4日、特別展「盛世聚首 天寶芳華:圓明園獸首●文物展(The Grand Gathering of the Century:Zodiac Heads from the Yuanmingyuan and Important Treasures)」が始まった。清(しん)朝の時代に築かれた離宮である「圓明園」にあった「十二生肖獣首銅像」のうち4つの銅像を展示する。
会場は同大にある「般哥展覽館(The Indra and Harry Banga Gallery)」(18/F., Lau Ming Wai Academic Building, City University of Hong Kong, 83 Tat Chee Avenue, Kowloon Tong, Kowloon, Hong Kong TEL 3442 6584)。同展では、北京市の保利芸術博物館が収蔵する十二支の獣首銅像のうち牛首、虎首、猿首、豚首と他の文化財数十点を展示する。
かつて圓明園にあった十二生肖獣首銅像は、帝国主義の時代に世界各地に離散した。現在、中国は7体を保有してる。7体のうち4体を展示する同展は、貴重な機会として注目を集めている。
圓明園は1709年、清朝の皇帝、康熙帝が息子の雍正帝に下賜した庭園で、世界遺産にも指定されている。紫禁城の北西部にある離宮。増改築が繰り返され、面積は350ヘクタールにも及ぶ。中国最初のバロック様式の宮殿や大噴水があるなど、清朝の権勢の象徴ともいえる。
しかし、欧米列強と清朝との対立の中、1856年に発生したアロー戦争で圓明園は英仏連合軍によって放火・破壊行為が行われたうえ、略奪行為も行われた。圓明園の中にあった十二生肖獣首銅像は十二支の銅像で、口から池に水を噴射し水時計にもなっていた。長い戦乱の中で銅像の頭だけが何者かに持ち出され行方が分からなくなっていた。十二支の頭は中国にとって屈辱の歴史の象徴ともいえる芸術作品である。
その後、1980年代に入り、牛、虎、猿の東部がアメリカで発見された後、オークションが始まり、これら3つは国務院の監督下にあるコングロマリット「保利集団」が次々と落札した。馬と豚(中国においてはイノシシではなく豚)はカジノ王、何鴻●(Stanley Ho)の尽力により中国に戻った。馬は一時期、カジノリゾートのグランド・リスボアのロビーでしばらく展示されていたこともあり、カジノの入り口のちょっとした観光スポットにもなっていた。ネズミとウサギもその後、競売にかけられ、中国人ビジネスマンが落札。一悶着(ひともんちゃく)あったが最終的には中国国家博物館に寄贈された。辰(たつ)は2018年にオークションにかけられた中国人バイヤーが落札したが、本物なのかどうか疑義が残っている。蛇、羊、鶏、犬の頭は依然として行方不明だ。
展示は、8月31日までの第1期と、9月5日~10月31日の第2期に分かれる。第1期では、十二支のうち虎、豚、牛、猿の4つのほか、北宋時代に設計された水車の復元模型、西周時代の青銅器、清朝時代の花瓶など約50点を展示する。拡張現実(AR)を使った展示など、参観者がより展示物の価値を理解しやすいよう工夫を施す。
第2期では、シンガポールにある、アジア文明博物館と合同で同博物館に展示されている十二支の頭のレプリカ全てを展示するほか、圓明園の建築物についての解説や噴水の仕掛けの説明などを予定している。
開館時間は10時~19時。月曜休館。入館無料。専用サイトで事前予約が必要。
●=既かんむりに旦。何鴻●=●=火かんむり、火を2つに木