学ぶ・知る

香港のインスタ映え公営住宅「彩虹邨」が消滅へ 老朽化で建て替え決まる

築60年の彩虹邨

築60年の彩虹邨

  • 17

  •  

 香港政府の「房屋委員會(Housing Authority)」が11月6日、九龍北東部にある公営住宅「彩虹邨(Choi Hung Estate)」について、老朽化が進んでいることから建て替えを決定した。

[広告]

カラフルな外観からインスタ映えするスポットとして、今や観光地にもなっている築60年の彩虹邨が消滅することになり、ニュースを聞きつけた香港市民が再び現地を訪れて撮影する人が現れるなど、別れを惜しむ声が上がっている。

土地が狭い香港は世界屈指の「家賃が高い街」として知られているが、香港政府は価格の安い公営住宅を建設することで香港市民に住居を提供し、200万人を超える市民が公営住宅に住んでいる。

 植民地時代の香港政庁は公営住宅すら建設していなかったが、1953年12月25日のクリスマス石硤尾(Shek Kip Mei)で大火事が発生。当時、このエリアは難民などが暮らしていたためバラックのような住宅が密集していたこともあり、40人余りが死傷し5万8000人が家を失った。香港政庁も住民を救済するため、公営住宅建設を始めた。

 それ以降、多くの公営住宅が建設されてきたが、時が経過し老朽化してきた公営住宅も近年は増加。香港政府は新築と建て替えの両方を行っている状況だ。現在、白田邨(Pak Tin Estate)、美東邨(Mei Tung Estate)、石籬中轉房屋(Shek Lei Interim Housing)、華富邨(Wah Fu Estate)、西環邨(Sai Wan Estate)、馬頭圍邨(Ma Tau Wai Estate)、業安工廠大廈(Yip On Factory Estate)、穗輝工廠大廈(Sui Fai Factory Estate)、宏昌工廠大廈(Wang Cheong Factory Estate)、葵安工廠大廈(Kwai On Factory Estate)という6つの公営住宅1万7000戸分と4つ工業ビル4800戸分を建て替えている。

 今回建て替えが決まった彩虹邨は1962年~1964年の間に完成し、7~20階建ての建物が11棟建設された。現在、7455戸、約1万7500人が住んでいる。外観は、青、緑、黄色、オレンジなどの色がペイントされており、美しい外観から近年はインスタ映えする場所として知られ、観光地にもなっている。築60年が経過しコンクリートの壁のひび割れ、漏水など老朽化が激しいことから、建て替えが必要と判断された。

 新しい彩虹邨は40階建てとなる予定だが、住民は一時的に別な公営住宅に移る必要があり、これらの手配に最長で36カ月ほどかかる。併せて公営住宅の地上階で店を運営していた場合は補償などもあり、手続きは複雑となる。建て替え工事が始まっても、場所に制限があるために一気に建て替えとはいかず、順番に建て替える予定で、新しい建物が全ての工事が終了するのに20年かかると見積もっている。

 こうした理由から現在、彩虹邨の南側にある宏照道(Wang Chiu Road)沿いに3000~4000戸の公営住宅を建設中で、これが2025年~2026年に完成するほか、黄大仙(Wong Tai Sin)にある美東邨内にある美東樓と美寶樓の建て替え工事は2027年~2028年、2900戸を建て替えて工事が終わる。彩虹邨の住民の一部はこちらの公営住宅に引っ越してもらうことを提案する予定だという。

 建て替えの詳細は2023年末に発表する予定だが、新しい彩虹邨の外観が今のようにカラフルになるかどうかは不明。少なくとも現存の建物は解体されることは確定しており、さらなる観光客が訪れるスポットになると見られる。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース