F1、フォーミュラEなどを主催している国際自動車連盟（FIA）は11月11日・12日、中環（Central）の海濱活動空間（Harbourfront Event Space）や龍和道（Lung Wo Road）などを使ってWorld RX世界ラリークロス選手権を第10戦と第11戦を開催した。第10戦はケビン・ハンセン選手が、第11戦はヨハン・クリストファーソン選手が、それぞれ優勝に輝いた。

観客席の目の前で砂ぼこりが舞う迫力も

　香港では電気自動車のF1レースといわれるフォーミュラEを2016年～2019年に開催してきたが、その数カ月後に大規模なデモが発生。2020年の開催日程に香港の名前がなかった。その上、2020年から新型コロナウイルスが世界で広がったため、香港でのモータースポーツのイベントを行う機会もなかった。一方、隣のマカオで長年開催されてきたマカオGPは、コロナ禍でも地元のレーサーを中心としたローカルレースとなったが開催を継続。加えて、ライバル都市のシンガポールはF1を誘致しており、香港政府としても何らかのモータースポーツを開催したいという考えがあった。

　ラリークロス選手権は、コースを長くする必要はなく、かつてフォーミュラEで使われたコースに近い形のコースを活用できることから開催にこぎ着けることができた。土地がなく、道路も狭い香港としては、ラリークロスは親和性が高い。

　フォーミュラEとの大きな違いは、アスファルトのほかにグラベルという砂利道が一部にある点。コースを整備しつつも、海濱活動空間のエリアでは砂利を敷いた。元々、開催は1.2キロのコースを予定していたものの、アスファルトエリアである龍和道の約300メートルと折り返しの約400メートルの2本の直線があったため、工事の遅れが原因により直線部分での安全が保てないとFIAは判断。合計700メートルの部分は使わず、ショートカットした形の短縮コースで行うことになった。コースが短くになったとはいえ工事の遅れの影響は大きく、11日のレースは午前8時から練習走行が始まる予定だったが、12時からの開始となった。従来はヒート1からヒート3までの3レースを行った後に準決勝、決勝となるが、ヒート3がキャンセルとなる事態となった。

　香港の主力産業である観光業の本格的な復活には、国際イベントの誘致が不可欠なことから、この興行に約8,000万香港ドルを投入したが、日程短縮という出来事は翌年の開催への心配事となる。幸い主催者側はレースの総括を「初めての開催なので、完璧でなかったことは仕方ない。いいレースが展開され、観客も盛り上がった。全体としては素晴らしいイベントだった」と評価し、来年の開催に含みを持たせた。

　レースは、初日が、ヒート1、準決勝第1レースに勝ったハンセン選手とヒート2と準決勝第2レースに勝ったニコラス・グランホルム選手が決勝で一騎打ちとなり、ハンセン選手が競り勝った。2日目は、過去5回のチャンピオン経験があるクリストファーソン選手が貫録を見せて優勝。ラリークロスのレースは車が時にはぶつかり合いながらコーナーを大胆に攻めていくことから、観客からはその迫力に大きな歓声を上げていた。