上環(Shueng Wan)にある老舗飲茶「蓮香居(Lin Heung Kui)」(2-3/F., 46-50 Des Voeux Road West, Sheung Wan, Hong Kong、TEL 2156 9328)が1月1日、「六安居」と改名して営業を始めた。オーナーや従業員などは変わらないが、香港人に親しまれてきた「蓮香」の文字が消えた。
蓮香居の源流は、1889年、広州市西部に開業した「連香楼」。「蓮蓉」というハスの餡(あん)を使ったお菓子で有名となり、事業が拡大して1918年に香港にも進出した。1949年になると中華人民共和国が成立し、その3年後の1952年に広州の店が国の管理下に置かれたため、香港の経営は広州から独立する形となった。
その後、広州側は中国当局によって改名させられたり、菓子部門は運営を継続したものの、レストランは一時的に営業停止となったりするなど激動の歴史をたどり、1984年、再び飲茶を楽しめる店として復活した。
香港側は、しばらくは安定した経営をしていたが、2009年になってから広州同様に激動の歴史が続いてきた。2009年になると経営者の一人で、日常の運営を担っていた顔尊輝さんが2009年2月に連香楼に家禽(かきん)類を納入している王柏榮さんと共同で別会社を設立。5月、「蓮香居」の名前で連香楼の支店として運営を始めた。
しかし、他の経営陣は、支店の話などは知らないほか、店名や登録商標を含め裁判になった。2019年になると上環にあった蓮香楼が再開発の関係で2019年2月27日に閉店することになった。翌28日は休業したものの、従業員が店のライセンスを取得する形で翌々日の3月1日に「蓮香茶室」に改名し、夜の営業は行わない形で営業再開にこぎ着けた。しかし数カ月後に発生した逃亡犯条例改正案によるデモと2020年に香港を襲ったコロナ禍により経営が悪化。店は休業する方向で進んでいたが、顔一族の4代目の顔漢彬さんが中心となってオーナーである資本策略社と話し合い、2020年3月11日に店名も「蓮香楼」に戻し営業を継続してきた。それでも、コロナ禍の影響は大きく、2022年8月8日に閉店した。
一方で、蓮香居は営業を継続してきたが、その後、和解が成立。そして、2024年正月初日から「六安居」と改名して再出発することになった。和解案の中に「蓮香」を使わないことで双方が同意したと見られている。店名が変わり胸元に「六安居」と刺しゅうされた新しい制服になったが、料理人、ホールのスタッフに変更はないため、経営体制や味を含め店に何ら変わりはない。
香港では「蓮香」が付く店は香港からはなくなったが、広州側が日本で中華料理を経営する「東湖」と提携して2023年9月、東京・銀座に「蓮香楼」をオープンしており、日本で名前が残ることになった。