中環(Central)にある飲茶の老舗「蓮香楼(Lin Heung Tea House)」(160-164 Wellington Street, Central, Hong Kong TEL 2544 4556)はビル所有者の方針から閉鎖か移転する判断を迫られていたが、新しい賃貸契約を結び「蓮香茶室」として3月1日、再出発することになった。
蓮香楼は1889年、広州市西部に「連香楼」として開業。「蓮蓉」という蓮の餡(あん)を使ったお菓子で有名となったのが始まり。その後、飲茶の店の方に事業を拡大し1918年には香港にも進出。1949年に中国人民共和国が成立したことにより香港の店は独立するような形で現在まで営業を続けてきた。大きさは地階と1階合わせて5380平方メートルで飲茶のほか祖業ともいえるお菓子の販売も行って来た。
現在の同店が入っている店の権利は海外に登記されている「PREMIER ERA」が所有しているほか、蓮香楼が入っているビルの曾昭?大廈(Tsang Chiu Ho Building)はマンションとして使われているが、全体の98%は資本策略社が保有している。資本策略はこのビルを再開発する計画を香港政府に提出していたことは昨年より明らかになっていた。
蓮香楼の賃貸の契約は2019年4月で移転か閉店の判断を迫られており、当初は2月27日で営業を終了し、28日は休業することになっており別れを惜しむ客も訪れていた。
しかし、同店で20年以上働いていた老●記さんがオーナーである顔家族から商標などを除き、店を運営するライセンスを取得した。そして、資本策略と最長で3年、1カ月38万香港ドルで賃貸契約を延長。3月1日から「蓮香茶室」に改名して営業を続けることになった。お菓子の販売も継続する。再出発に当たり、昔ながらの飲茶スタイルで行う方針と、旧正月で解雇した従業員もいることによる人員確保の関係から夜の営業は取りやめることになったという。
資本策略の鍾楚義主席は再契約したことを認めたものの、なぜ再開発ではなく契約延長になったかについての理由を語っていない。ただ市場関係者からは、現時点で具体的な計画案が上がっておらず、再開発をしても新しいテナントを見つけるのは困難と判断したからではないかという声が上がっている。
香港市民の間ではこの延長について冷静な反応を示している。歴史があり、数少なくなったワゴンスタイルの飲茶の店であることから喜ばしいニュースと考えているものの、家族で通う飲茶の店はそれぞれ決まっており、必ずしも蓮香楼になじみがあるわけではないからだ。閉店のニュースが流れた後、昼間の営業は観光客と閉店を惜しむ人で従来よりも混雑していたが、常連が通う早朝などは新聞を広げてゆっくり飲茶を楽しむという普段通りの光景が広がっている。ただ、昔の雰囲気を残す飲茶の店で中環という土地柄、観光面だけを考えても店が存在しているだけ価値は高い。最低3年は同店の飲茶を楽しむことができそうだ。
●=にんべんに火