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香港の老舗居酒屋「一番」が閉店へ 日本食店が無いころから営業 

閉店が決まった「一番」

閉店が決まった「一番」

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 約30年の歴史を持つ銅鑼湾(Causeway Bay)の老舗居酒屋「炉端焼 一番」(12/F., Macau Yat Yuen Centre, 525 Hennessy Road, Causeway Bay, Hong Kong Tel: 2890 7580、2890 7720)が1月30日、閉店する。香港に日本食レストランが無い時代からの功労店が閉店を決め、香港の日本食も一つの時代の変化を迎えている。

常連のボトルも並ぶ店内の様子

 創業者は折原國弘さんで、元々は1988年に「炉端焼 天龍」を波斯富街(Percival Street)にオープンした。1990年、利園(Lee Gardens)のそばで「炉端焼 一番」として生まれ変わった。蝶ネクタイで飾らない人柄の折原さんと、折原さんの友人で「おかみ」であった山口千枝子さんが店を経営してきた。現在の場所には2010年に移転。2015年になると折原さんが引退し帰国することになったことから、天龍時代から料理人として働いてきた陳偉(Gary Chan)さんがビジネスパートナーである柏倫さんと一緒に店を受け継ぎ、現在に至る。

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 「香港人を含めて新しい人はうちの店を知らないんじゃない?」と陳さんは謙遜するが、常連だけで十分店を経営することができる店だった。日本食店がまだ少なかったころを知る香港在住15年以上の人であれば、必ず一度は訪れている店でもある。

 「元々、『松坂』という日本食店で働いていて、天龍がオープンするときから折原さんのところでずっとシェフとして働いてきた」と陳さん。思い出を聞くと「一番が開店したころ、ずっと焼き物を担当していて、注文伝票がズラッと並べられていた光景かな」と懐かしむ。料理は陳さんと山口さんで考案し、折原さんが試食してメニュー化していったという。今のメニューは、昔とほぼ変わらない。『もつ煮』(60香港ドル)、『自家製餃子』(5個50ドル)、『とりの唐揚げ』(5個60香港ドル)が定番として人気がある」という。メニューは100種類ほどあるが、長い間、ほとんど料理を変えなかった。その理由は「昔の香港の日本食レストランは、味は一定水準以上ばかりだったが、今は時々、一定水準以下の店が出てきた。当店には長年培ってきた『一番の味』というのも存在する。もつ煮なら一番なりのもつ煮の味があり、その味を続けることの方が大事だと思ったから」と陳さんは話す。

 香港人の味覚も変わったと言い、「刺し身だけではなく、納豆やとろろを食べるようになった。私自身もそうだったが、納豆は直接ではなく納豆巻きにして食べてもらうようにすると比較的違和感なく食べてもらえるようになる」と、ちょっとした工夫をすることでハードルが高い食材を受け入れてもらう努力もした。

 現在の店の面積は約1000平方フィート、席数は40席で、典型的な日本の居酒屋の雰囲気だ。閉店を決めた理由について、「具体的な話はしなかったが、家賃が上がると聞いたから。実は10年前に一度、閉店を考えた時があったが、そのころは店の寿命は20年と業界でいわれていたので、それを超えようと考えていた。オープンして20年を超え、2年前の契約更新のときも『あと2年頑張ろう。次の更新のときにどうするのか判断すればいい』と思っていた。一番を始めたころは銅鑼湾に日本の料理に関係する店は15店くらいだったが今は約300店もあり、競争が激しくなったというのもある」と話す。

 オープンしたころ、客は食べたいものを注文していたとが、物価の上昇もあり、今では値段を見たうえで料理を注文するようになったという。以前は客の主力ともいえる駐在員は、ある程度年齢を重ねた所帯持ちの人だったが、今は企業の経費削減で若い独身駐在員が増えていることなども影響している。

 今後については、「まだ決めていない。旧正月を過ぎてから考えるかな」と陳さん。

 営業時間は、ランチ=12時~15時、ディナー=18時~23時(金曜は翌2時まで)。日曜定休。