長期化する新型コロナウイルスの影響で、香港市民にもなじみのある中華料理店「東海酒家(East Ocean Restaurant)」「鴻星海鮮酒家(Super Star Seafood Restaurant)」が店を閉める可能性が高いことが明らかになった。中環(Central)にあるレトロな香港を再現したスターバックスも10月中旬で閉店することが発表された。
香港は9月23日現在、37日連続で市中感染ゼロが続き、外出しても感染するリスクがほぼ無くなり、レストランは軒並み予約が必要になるなど飲食業界は改善傾向を示してきている。一方、香港政府はワクチンバブルという政策を推進し、従業員のワクチン接種の度合いなどで営業時間や収容できる客の数を変化させるなど厳しい防疫対策を継続している。
1982年に創業した広東料理の東海酒家を経営する「東海飲食集団(East Ocean Gourmet Group」)は傘下に「東海薈(East Ocean Seaview Restaurant)」などの複数のブランドを抱え、香港で計9店舗を構える。鴻星海鮮酒家を経営する「鴻星集団(Super Star Group)」は1989年に創業し、一時期は東京のお台場や新橋にも支店を構えていた。石頭魚などの店名にあるように海鮮料理に力を入れてきたほか、香港人が結婚式を挙げる場所としてよく使われるレストランとしても知られている。尖沙咀店はリノベーション中としながらもすでに、他のレストランに取って代わられている。
この2店の大株主が鄧一族。この一族のトップは香港内に多くのテナント用物件を抱え「舖王」と呼ばれていた鄧成波だが、今年5月、88歳で亡くなった。鄧は日本人にはあまり有名ではないが、最盛期に200もの不動産物件を持つなど、経済誌「フォーブス」の長者番付にランクインするほどの資産家。不動産売買と賃貸料を軸に稼いできたことから、不動産投資に強い関心を持つ香港市民に大きな影響を与えてきた。
不動産以外の投資案件の一つとして飲食事業があったが、2019年の逃亡犯条例改正案に端を発したデモと新型コロナの感染拡大で、飲食の経営環境が悪化したこと、鄧が逝去したことで鄧一族はビジネスの再評価を始めた。数カ月前、鄧一族はレストラン側に3カ月以内に収支の目標を達成できなければ、最速で中秋の名月後に閉鎖すると伝えていた。
東海と鴻星のスポークスマンは「第4四半期と来年の状況に関しては楽観的で、現時点で閉店する計画はない」と否定しているが、レストランの従業員には無給休暇の取得などを求めるなどしており、何らのテコ入れは避けられない見通しだ。
時期を同じくして、日本人にも人気が高かった中環(Central)の都?利街(Duddell Street)にあるスターバックスは10月に閉店すると公式フェイスブックで明らかにした。2009年に開店した同店は、香港の古いスタイルのカフェスタイルといえる「冰室」をテーマにした店で、1950~70年代のレトロな香港を楽しめるスタバとして知られていた。
同社は「香港のスターバックスの店舗展開については継続して見直しを進めており、客のニーズの状況によって変わっていく」と間接的に新型コロナの影響があったことを認めている。閉店後は蘭桂坊(Lan Kwai Fong)の支店の利用を促していく。