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香港の映画館「総統戯院」、58年の歴史に幕 相次ぎ映画館閉鎖

58年の歴史に幕を閉じた、香港の映画館「総統戯院(President Theatre)」

58年の歴史に幕を閉じた、香港の映画館「総統戯院(President Theatre)」

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 香港で映画館を経営している新寶院線(Newport Circuit)は、銅鑼湾(Causeway Bay)で営業していた「総統戯院(President Theatre)」(517 Jaffe Road, Causeway Bay, Hong Kong)の営業を4月30日、終了した。58年の歴史を持つ映画館だったが、ネットフリックスなどの配信事業者の台頭などから将来の経営環境は厳しいと判断し、事業継続を断念した。時を同じく、4月21日には新蒲崗(San Po Kong)にあった嘉禾啓德戲院(Golden Harvest Cinemas Kai Tak)が閉館し、10日ほどの間に2つの映画館が閉館したことになる。

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 同戯院は1966年に開業した。一度閉鎖されたが2011年に復活し、2つのスクリーン合わせて428席ある映画館として営業を続けてきた。最終営業日に上映された映画は張家輝(ニック・チョン)主演の「超意神探(Suspect)、「特技狂人(The Fall Guy/フォールガイ)、「白日之下(In Board Daylight)」、「哥斯拉X金剛: 新帝國(Godzilla x Kong: The New Empire/ゴジラ×コング 新たなる帝国)」の4作品を計9回、上映した。最後の上映作品は19時35分からの「超意神探」だった。最後の映画の客の入りは8~9割程度だったが、映画券購入客の一部はコレクションとして残すため、実際に映画を見なかった客もいたという。

 コロナ禍の2021年、シネコン最大手の「UA戲院(UA Cinemas)」の閉鎖は映画界にとって厳しい時代の到来を予兆させるものだった。総統戯院は、長年同館に通う常連客によって支えられていた映画館だったが、それでもネットフリックスを中心としたネット配信が市民に浸透している影響を避けられず、足を運ぶ回数が減少した。コロナ禍後は、香港市民が物価の安い深●に足を運ぶ消費機会も増えた。そのため、銅鑼湾のそごう裏の謝斐道と景隆街(Cannon Street)が交わる角地という好立地にあっても人流減少の影響は避けられず、その結果、高額な家賃が大きな負担になっていた。

 4月21日は「全港戲院日2024」として、基本的に一律30香港ドルで映画を鑑賞できる日で、今年は63館で70作品が上映された。香港政府の肝いりで2023年に始まったイベントだが、今年の入場者数は前年の22万2036人から20万3869人に減少したほか、売り上げも同666万1,080香港ドルから611万6,076香港ドルに落ち込むなど、映画離れが数字からも読み取れる。

 同館で働いていた20人のスタッフが職を失うことになったほか、同館閉鎖により、新寶院線が経営する映画館は、旺角(Mong Kok)にある新寶戯院と屯門(Tuen Mun)にある凱都戲院(Hyland)の2館のみとなる。

 ●=土へんに川

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