今年は9月21日に中秋の名月＝中秋節（Mid-Autumn Festival）を迎える香港で、中秋節には欠かせない月餅（Moon Cake）の予約や販売が本格化してきた。毎年、各店が趣向を凝らした月餅を販売し消費者を楽しませているが、今年はオリジナルな月餅にとどまらず、パッケージにも趣向を凝らした店が目立っている。

移動が制限されている世相を反映したようなパッケージが斬新な「當文歴（Dang Wen Li）餅店 by Dominique Ansel」の月餅

　元々は秋の豊作を願う祭事である中秋節だが、現在では家族や親戚が集まって月を眺めながら月餅を食べる風習となり、香港では仕事の取引先や家族、親戚にさまざまな月餅が贈られる。そのため、年々、さまざまな飲食店やスイーツ店が月餅販売に乗り出し、熾烈（しれつ）な月餅商戦が繰り広げられている。そんな月餅商戦が今年、フレーバーなど月餅自体の個性を競うだけでなくパッケージにもこだわりを見せる。

　「クロナッツ」の生みの親として世界的に知られるパティシエのドミニク・アンセルさんのベーカリー「當文歴（Dang Wen Li）餅店 by Dominique Ansel」では、本店があるニューヨークをテーマに、スノードームをかたどった透明なドームの中にニューヨークの街並みを並べたパッケージの月餅「Fly me to New York Moon Cake Gift Set」（6個入り、458香港ドル、8月15日までの先行予約価格）を販売。世界的に移動が制限されている中、ニューヨークの街並みを恋しく思う人へのプレゼントに仕上げた。フレーバーはアールグレーとカスタードの組み合わせと、伝統的なカスタード月餅の2種類。

　シンガポール発の紅茶ブランド「Tea WG」からは箱がオルゴールになったセットが登場。紅茶フレーバーの月餅と中秋節に合わせてブレンドした限定の紅茶「Moon Dance Tea」を組み合わせた「 Moon Dance Tea Mooncake Music Box Collection」（紅茶と月餅2個入り、460香港ドル、8月30日までの先行予約価格）を用意。

　尖沙咀の5つ星ホテル「ローズウッド香港」は再生紙を100％使った持続可能なパッケージを採用している。一年で一番美しいとされる中秋の名月が描かれた「Love Parcel from the Moon」と名付けたパッケージで、同ホテルの中華料理のエグゼクティブ・シェフを務める李志偉さんが世に送り出すのは、長年かけて「完璧なレシピに仕上げた」というハスの実の白餡（あん）を使った伝統的な月餅「Rosewood Traditional White Lotus Seed Paste with Double Egg Yolks」 (4個入り、498香港ドル)、ジャズミンエッグカスタードと、いぶした紅茶「ラプサンスーチョン」とハスの実、小豆とマンダリンピールのモダンなフレーバーを6個のセットにした「Rosewood Mini Assorted Flavour Mooncakes」(6個入り、458香港ドル)、クリーミーなカスタード月餅「The Legacy House Mini」（同、438香港ドル）に加え、香港のローカルグルメブランド「Dashije」とパートナーを組み、伝統的なフレーバーを現代風にアレンジした内容の「Rosewood x Dashijie Yellow Lotus Seed Paste with Olive Seeds and Double Egg Yolks」（4個入り、588香港ドル）を販売する。

　月餅人気を香港だけでなく、海外にまで波及させた立役者とされる「ザ・ペニンシュラ香港」のカスタード月餅は今やシンガポールやマレーシア、日本、カナダなど世界30の店舗で販売される。そんな同ホテルは昨年に続き、再生可能なパッケージを採用し、空き箱の返却を呼び掛け、応じた購入客にはギフトを提供する。回収したパッケージは香港の団体「Mil Mil」がペーパーナプキンへと再生し、地元のチャリティー団体に寄付。フレーバーは同ホテルの伝統のカスタード月餅や、お茶をテーマにした鉄観音フレーバー、アールグレーフレーバーなどに加え、今年はクルミとイチジクのエッグカスタードと紅ナツメ、黒ナツメとハスの実餡の2種類のフレーバーが新登場。

　ほかにもLINEフレンズと提携した「奇華餅家」はブラウン、チョコ、コニーとサリーが描かれた月餅4個入りの月形の缶、それぞれのキャラクター1つが描かれた1個入りの星型の缶4種類を販売する。