日中は伝統的な茶楼として営業する香港・中環の老舗茶楼「陸羽茶室」(1/F, Luk Yu Tea House, 24-26 Stanley Street, Central, Hong Kong)1階のダイニングルームが8月、金曜・土曜の夜だけ「陸羽茶酒(Luk Yu Tea Club)」として営業を始めた。百年の茶文化と現代的なカクテル文化を融合させたスポットとして、香港の夜に新しい選択肢を提案する。
福建省で生産される最高級の白茶「白毫銀針茶」を使ったモクテル
陸羽茶室は1933年馬超万さんと李熾南さんが、中環の永吉街に開いた広東式の茶楼。後世「茶聖」と称される「陸羽」にちなんで店名を付け、高級茶を売り物とし、有名な高級茶室となった。「富豪の食堂」の一つとして称えられ、主な客層は中環・上環でビジネスを展開する業界関係者や富裕層だった。元香港総督のマクレホーズ(MacLehose)、ユード(Youde)、ウィルソン(Wilson)、パッテン(Patten)も常連客であり、元米国務長官のキッシンジャー、元中国最高指導者●小平の娘である●琳、デンマーク女王もかつて訪れている。
店内のインテリアデザインは、1930年代の上海や広州のスタイル。伝統的な嶺南様式を取り入れ、1階ロビーの壁には「一帆風順」と「前程万里」と題した2枚のイタリア製ステンドグラスが飾られている。張大千、王雪濤、黄君壁といった巨匠による書画も展示し、清朝様式の椅子や西洋式の大時計など、古風で趣のある装飾品が所狭しと並んでいる。テラゾーの床、雲花模様、広州式の個室、中国風の木製椅子と大理石の食卓を組み合わせたブースなど、象徴的な内装は80年以上にわたり一度も変更されていない。
1975年、永吉街の店舗オーナーが建物を再開発するために物件を回収した際、陸羽茶室は多くの常連客や富裕層からの出資を得て、1976年に現在の場所へ移転し、4階建ての「陸羽茶室酒楼」となった。当初の姿を保つため、茶室のチーク材の装飾、中国の伝統高級家具、書画、アンティークの彩磁、びょうぶ、天井扇風機、ガラス製の壁灯などが、旧店舗から現在の場所へ移設された。
陸羽茶室の木製看板は最も象徴的な建築的特徴がある。30年前の古い看板は、無垢のチーク材を使い、石炭の粉を焼き付けて施された精巧な彫刻で装飾されており、その上には「陸羽茶室」という4文字の透かし彫りの大文字が刻まれている。長年の歴史を経て、2008年に新しいモダンなネオンサインに交換され、木製の看板は現在、香港歴史博物館に保存されているという。
現在の士丹利街にある建物は、戦前から続く香港の茶楼文化を象徴する存在として残されてきた。クラシックな木製家具やステンドグラスの窓、古き良き広東料理の味わいに集まる常連客も多い。昼間は専門の茶師が茶葉を選定し、プーアル茶、六安、龍井、香片、白牡丹、鉄観音の計6種類の特級正品茶葉を使い、適切な茶器といれ方を組み合わせて提供している。
「陸羽茶酒」のテーマは「源於原點(原点に立ち返る)」。茶葉は全て陸羽茶室のものを使い、茶芸の技を入れ込んだ。さらに、150年の歴史を持つ香港の老舗蒸留所「永利威(Wing Lee Wai)」の伝統酒を取り入れ、ウコギ科の植物「五加皮」、バラの花びらやバラのエッセンスを使った香り高いリキュール「●瑰露」、熟成タイプの高級紹興酒「花雕酒」といった中国の酒を現代的に再解釈した。
ドリンクメニューには、2つのシリーズがあり、茶酒シリーズでは、福建省で生産される最高級の白茶「白毫銀針茶」を使ったノンアルコール「霧中白・Ivory Mist」、ジャスミン(茉莉花)茶とジンを組み合わせた「花窗月・Moonlit Blossom」など、茶葉を主役にしたカクテルが並ぶ。
中国酒シリーズでは、五加皮を使ったネグローニ風「五味廻・Return of Five Aromas」、バラのリキュールをベースにした「醺薔薇・Tipsy Velvet」、花雕酒とブランデーを合わせた「幸花頌・Fortune Ode」などを提供する。
カクテルに合わせてフードメニューも用意した。陸羽茶室の厨房が編み出した「夜食(宵夜)メニュー」には、干しカレイを使った焼売「脯魚蒸燒賣」や、雲南ハムとエビのウエハースで挟んだ「雲腿威化蝦」、カスタードのペストリー「香甜●皇酥」、豚の肺を使った薬膳スープ「杏汁白肺湯」など、香港らしい味わいを用意した。
創業チームは「伝統は静止するものではなく、進化するもの」と話す。歴史ある茶葉や酒を現代の想像力で再構築することで、文化は新しい世代へと受け継いでいきたいとする。
営業は金曜・土曜の18時~24時。
●=登へんにおおざと。●=王へんに攵、●=女へんに乃。