香港の西九文化区(WestK)にあるミュージアムM+で6月27日、特別展「デザインあ展(Design Ah! Experience the Wonder of Everyday Design)」が開幕した。「歩く」「食べる」「座る」といった日常の行為を題材に、参加型インスタレーションや映像、音楽を通じて「デザインの視点」を体験できる家族向け展示となる。
「デザインあ(Design Ah!)」は、NHKが制作するデザイン教育番組を元にしたもので、身の回りのものや行動に潜む「デザインの考え方」を、映像・音・動きによって直感的に理解できるよう構成しているのが特徴である。
これまでにもアメリカやイギリス、ドイツなど海外のデザインミュージアムなどで、番組の映像作品を上映、日本のデザイン教育の事例として紹介、ワークショップ形式での紹介など、小規模な関連展示は行われたことがあるが、今回M+での特別展は、海外展開の中でも最大規模のもので、日本国外の大規模展示としては香港が初となる。番組の理念を空間体験として拡張したもので、来場者が「見る」だけでなく、「触る」「動く」「試す」ことでデザインの本質に気づく構成とし、番組の世界を実際に体験できる内容に仕上げた。
番組が扱うのは、椅子、箸、信号機、食器といった日常の道具や、「歩く」「座る」「食べる」といった基本的な動作。普段は意識しない形や仕組みの背景にある工夫を可視化し、視聴者に「なぜ、こうなっているのか」という問いを自然に促す。「Design is often hidden in plain sight(デザインはしばしば目の前にあるのに気づかれない)」とし、日常を遊び心で再解釈させる。
展示は21のステーションで構成し、香港の生活文化や視覚環境にも着想を得た10種類の「日常の行為」をテーマにした。例えば「座る」を失った世界を想像させる「沒人坐下的世界」や、食事前に写真を撮る習慣をユーモラスに表現した「相機食先!」、壊すと直すを繰り返す「破壞與修補」など、来場者は身体を使いながら「当たり前」を問い直すことができる。箸や歯ブラシ、バス、信号機など、身近なものの背景にある「デザインの思考」を可視化し、来場者が新たな視点で日常を捉え直すきっかけを提供する。
総合ディレクターの佐藤卓さん、映像ディレクターの中村勇吾さん、音楽ディレクターの蓮沼執太さんは「デザインは日常に隠れているが、私たちの行動や幸福に深く結びついている。当展を通じて身近なものを新しい視点で見直してほしい」とコメントを寄せる。
M+のスハニャ・ラフェル(Suhanya Raffel)館長は「当展はデザインを身近で重要な文化として提示し、家族や若い世代に遊び心と学びを提供する」と話し、展示の一部には香港の視覚環境や食文化を取り入れ、来場者が自分の生活と結びつけて体験できるよう工夫している点も強調する。
さらに、M+の巨大LEDスクリーン「M+ Facade」では、展覧会に合わせて新作映像「M+ Ah!」を毎夜上映する。内容はNHKの番組を元に香港向けに再構成した短編映像で、街の風景や日常の瞬間を新しいデザイン解釈で描き出す。
会期中は毎日ガイドツアーを行うほか、親子向け「ファミリーデー」や「サマーデイキャンプ」など教育プログラムも用意。子どもたちは絵を描いたり、物語を聞いたり、自由に遊びながらデザインを学べる。学校や地域団体向けの特別プログラムも予定しており、幅広い層が参加できるようにする。
館内のM+ショップでは、展示に合わせた限定グッズも販売。Tシャツやトートバッグなどのほか、香港文化をモチーフにした「Very Hong Kong」シリーズも登場。飲茶や街角の風景をキャラクター化したぬいぐるみやキーチェーンなどもそろえた。
開館時間は10時~18時(金曜は22時まで)。月曜休館。入場料は一般190香港ドルで、大人と子どものセット券(大人2人、子ども1人=400香港ドル、大人1人子ども1人=250香港ドル)も販売する。チケットはM+公式サイトや旅行プラットフォームで扱う。2027年1月10日まで。