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香港から熊本へチャリティー演奏 香港フィルの田中さん、音を届ける

チャリティーコンサートを開催した香港フィルの田中さんとチェロ奏者のリチャード・バンピングさん&copyMiyuki Kume

チャリティーコンサートを開催した香港フィルの田中さんとチェロ奏者のリチャード・バンピングさん©Miyuki Kume

 今年7月に熊本で発生した熊本地震を支援するため、9月19日、香港日本人倶楽部でチャリティー音楽会が開催された。出演したのは、熊本に縁があり香港フィルハーモニー管弦楽団に所属するバイオリン奏者・田中知子さんと、同楽団のチェロ奏者リチャード・バンピングさん。主催は香港日本人倶楽部で、在香港日本国総領事館と香港日本人商工会議所が後援した。会場には在香港日本国総領事館の三浦潤大使をはじめ、大人から子どもまで計102人が集まった。

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 田中さんは10年前の熊本地震の際にもチャリティーコンサートを開いており、以来、故郷・熊本を思いながら活動を続けてきた。復活した熊本城天守閣での演奏計画が決まった矢先、再び震災が起きたことから、今回も支援のために演奏を決意したという。

 バイオリニストとして活動する傍ら作曲も手掛ける田中さんは、今回のチャリティーでも自作曲を披露。4歳からバイオリンを始め、熊本で育った彼女は「自分にできることは何か」と考え、周囲の自然な声掛けに支えられて企画が形になったと語る。

 今回のプログラムは、27日に熊本で行う演奏会と少し異なり、誰もが親しみやすい曲を中心に選曲。チェリストのバンピングさんとのハーモニーを意識した。チェロの演奏を生かしたショパンのノクターンなども加えたが、今回はチェリストと組むにあたって、どうやってそれぞれの楽器の魅力を引き出すか、友人にもサポートをしてもらいながら、演奏当日を迎えたという。

 「バイオリンとチェロの組み合わせは同じ弦楽器同士ということもあり、これまでにもよく演奏してきたバイオリン+ピアノとも違ったハーモニーが生まれ、特別感もまた生まれる」と田中さん。

 田中さんの代表曲「さくら」は2014年、香港の日本人墓地を訪れた際に生まれた。明治から大正にかけて香港で亡くなった邦人が眠る「香港墳場(Hong Kong Cemetery)」で、ひっそりと咲く桜の姿に心を動かされたことがきっかけだった。墓地には留学生や商社マン、商館で働いていた「からゆきさん」と呼ばれる女性たちもおり、中にはビクトリア湾に身投げをして命を絶った人もいたという。そうした人々の歩んだ厳しい人生に思いをはせる中で、自然にメロディーが湧き上がったと田中さんは振り返る。

 「月」は観月会で見た大きな月と水面に映るウサギの姿から着想を得た曲。さらに、田中さんが作曲した「Kumamoto」の前にはホルストの「ジュピター」を演奏し、「壮大な響きで心を準備してから聴いてほしかったから」と意図を語る。「Kumamoto」は阿蘇の緑や草千里の風景を思い浮かべて描いた作品で、幼少期に草千里で段ボール草すべりをした記憶を込めたという。

 27日には熊本でもチャリティー演奏を行い、天守閣では「荒城の月」などもを披露する予定。熊本ではチェロを中条誠一さんが担当する。

 田中さんは「私は演奏するだけで、気づけば周囲がサポートしてくれて形になった。香港の人々はドネーション意識が高く、社会的役割として自然に支援を考えている」と話す。「熊本にいたらこうした発想はできなかったと思う。香港社会との橋渡しになれればうれしい」とも話す。

 「チャリティーはホールでできる人はホールでやればよいし、私は聴いてくれる人がいるなら場所を選ばず演奏したい。熊本出身だからではなく、音楽を聴いて一人でも幸せや安らぎを感じてもらえるなら、今後もいろいろな場所で弾いていきたい」と意気込む。

 今回集まった義援金は、日本赤十字社の令和8年熊本地震災害義援金へ全額寄付する。