デモに見るジェネレーションギャップと帰属意識-続くデモの裏に

至る所に貼られた民主への思い

至る所に貼られた民主への思い

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 1カ月近くデモが続いている「占領中環(オキュパイセントラル)」、これまでにいろいろな動きがあり、それに関連するさまざまな報道がされてきたが、そこには世代間の違いや帰属意識の違いが見える。

デモの場所に設けられた自習テント。発電機もありパソコンが使える

今回のデモは、3世代での考え方が違っていることがわかる。どの世界にも共通して、どこで生まれ、思春期をどこで過ごしたという点が人生観の形成する上で重要だ。そこに香港の場合は、清朝、植民地、1国2制度という複雑な歴史が加わる。「香港人だから、中国人だから、新移民だから、香港政府だから、共産党だから、マフィアだから」などと、おおざっぱにくくってしまうとデモの本質が見えなくなってしまいかねない。

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 まず共産党、中央政府そして人民解放軍の印象について聞くと、大学生は大体「何となく怖いかな。香港政府? 全然怖くない」と語るがその口調は淡々としている。40代の親の世代になると「天安門事件を覚えているから、やっぱり怖い」という意見が多かった。「怖さより怒りを感じる」という親もいた。65歳の悠々自適な老後を送っているトムさんは息子1人と2人の孫を持つ。「親、孫の世代は共産党が怖いといっても実感が伴っていないよ。文化大革命なんて悪夢の一言。今のデモを見ていると人民解放軍が介入してきたときどうなるのかわからないんだろうね」

 学生に「親にデモに参加することを伝えたか?」と聞くと「半数は伝えた」と答え、残り半数は「黙って来た」という意見だった。親に伝えた学生も最初は反対され、説明して親に納得してもらった人が多かった。反対され親に内緒で参加した専門学校生は「危険だから。もしけがでもしたら」と言われたという。親の胸中は複雑だ。50代で中国に工場を抱える男性は「できることなら行かせたくないけど、それでも『行く』言ったら反対できない」と話す。ある60代の男性に質問すると「デモの様子を見に来た。やっていることは正しいけど、全人代の決定を変えるのは不可能。だからこのデモは無意味。時間の無駄。家に帰って勉強に励んだほうがいい」と生徒をばっさり。

 香港に対する思いも違った。香港で生まれ育った世代は“1国2制度の香港しか”知らない。「中国政府が34年後にどうなっているのかわからないけど、自分たちが中年のときにこの制度が終わる。状況によっては、2制度の延長を求めてデモをすると思う」と話すのは21歳の学生エリーさん。民主国家ならぬ“民主都市”の継続も視野に入っている。親の年代は2制度が終わるころ寿命を迎えるが、そもそも香港にこだわっている人は多くない。50代のコンサルティング関係の仕事をしている男性は「徐々に1国2制度は形骸化されてきたが、今回で事実上終わったようなもの。いい場所があるのなら香港にはこだわらないし、子どもにもそう伝えるつもり」。前述のトムさんは「中国は3000年の歴史があり、トップの決め方も中国のやり方でやってきた。共産党の国になってからもそう。自分たちが築き上げたやり方があるのだから別に普通選挙という西洋のやり方を導入する必要はないと思う」

トムさんを含め年齢を重ねた人の話を聞くと、「自分の意見が矛盾しているとはわかっていても、どうすることもできない」という意見が多い。「香港のシステムの良さを理解する一方で、文革などで辛い思いをしても自分は中国人であり、中国の歴史に誇りをもつからだ」という。親の世代は経済的繁栄とともに成長してきたため、キャリアやより良い生活がキーワード。そして自分の子どもたちがベターは将来を送るためなら、明日からでも移民もいとわない。香港への帰属意識が希薄だ。今の学生たちは、事実上、中国返還後の香港しか知らないため、郷土愛が強い。2制度が終わるときにも自由を求めて戦うつもりという言葉が、それを表している。やはり自分がどのような環境で育ってきたのかというのがここ香港では大きな意味を占めている。

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