香港を象徴する観光名所山頂（ザ・ピーク）と街を結ぶ「ピーク・トラム」が3月5日にテスト走行を始め、この夏、運行を開始することが決まった。従来と同じ2両編成だが、中環の花園道（ガーデンロード）と山頂での待ち時間を大幅に削減することを目的に車両を長くしたことが最大の特徴。ザ・ホンコン・アンド・シャンハイ・ホテルズ社が所有・運営する。

　ピークは観光客も必ず訪れる場所であることから観光客増加に伴い、以前は花園道には連日長い行列ができ、何時間も待たなければいけない状況もあった。これに対処するため、ピーク・トラムのシステムや駅の大規模改修工事を2018年に始め、ピーク・トラムウェイズ社は自己資金7億香港ドルを拠出。2018年以降、2回の運休を経て、昨年6月28日から乗車できなくなっていた。

　ピーク・トラムは世界で最も古く最も有名なケーブルカーの一つで、1888年5月30日に運行を始めたピーク・トラムは130年以上もの間、香港でサービスを提供してきた。二重反転式ケーブルカーは、走行距離1.4キロを約10分で結ぶ。標高は、海抜48メートルから396メートルまで上昇し、勾配は最大26度に及ぶ。年間約600万人以上もの乗客を乗せ、初期の石炭焚き蒸気ボイラーから、現在の超高効率ボイラーに至るまで、近代化に合わせて変化してきた。

　スイスのガラベンタ（Garaventa）社、CWA社、フレイ（Frey）社によって製造された新型ピーク・トラムは障がい者のための広いドアと段差のないアクセスを実現したほか、より広いパノラマ風景、香港のスカイラインを望めるようにもした。併せて、1300人が花園駅で過ごせるよう、駅の待ち合いスペースを増設した。

　車体は、 先代からの伝統を守りながら、モダンクラシックを意識してデザイン。これまでの落ち着いた赤から、特注の濃いグリーンに変わった。天井の窓も大きくなり、より多くの採光を取り込め、時に車体に当たる木々なども間近に感じることができるようにした。

　これまでの定員120人の車両を長い最新の210人乗り車両に交換するため、全てのけん引、制御システムの完全交換、新しい軌道レールの敷設、軌道路盤や橋梁の強化、さらには通過用ループとガーデンロード駅の拡張が必要となっていた。75％の定員の増加により、乗客の待ち時間を70％短縮できると試算する。

　具体的な運行開始日は追って発表するという。